日々のこと、2021年8月15日

日々のこと

お盆も佳境の終戦記念日だというのに、東京はいやに冷え込んでしまった。夏服では明らかに肌寒く、衣替えもしていない状況では切れるカードも少なくて困ってしまう。こう雨が続くと、自転車通勤勢の僕としては徒歩を強いられるのが悩ましいところなのだが、近頃は聴きたい新譜が溜まっていたこともあり、意外と有意義に片道四十分の徒歩通勤を楽しんでいる。今週聴いたところでいうとTaiko Super Kicks『石』、ザ・なつやすみバンド『NEO PARK』、月ノ美兎『月の兎はヴァーチュアルの夢をみる』、ASIAN KUNG-FU GENERATION『エンパシー』、ランタンパレード『love is the mystery』、METEOR『2019』、Seiho『CAMP』 。特にSeihoさんの『CAMP』はずっとAmazonでしか聴けなかったのがApple Musicに移動してきてくれてとても嬉しい。かなり規格外に素晴らしいEPなので何度聴いたか分からない。アジカンと羊文学のモーニーがフィーチャリングした『触れたい確かめたい』のSeiho Remixも素晴らしかったことだし、彼のチカラって結構マジですごい。

日々のこと、2021年8月15日

日曜日、今作っている弊社の新しいプロダクトの包装に関して、なんらかのヒントを得られまいかと目黒美術館で催されていた『包む展』へ。

日本古来の伝統的な素材、藁や竹や和紙を使用した様々な商品のパッケージを集めたこの展示。個人的には藁を使った各種の包装が僕の胸を鷲掴みにしてきて苦しい。ポスターの卵の包装に始まり、干した鰤を藁で巻いて保存性を高めた巻鰤、検問しやすく運びやすく積みやすく作られた米俵、何匹もの鮎を吊るすための魚つと。藁ひとつでここまで色々なものを包めるのかと、日本人の知恵と手仕事の美しさに胸打たれてしまった。

近頃よく考えているのが日本人の贈答文化のことで、お中元、お歳暮、ご祝儀、お香典 etc… 日本には、古くから続く伝統的なプレゼント文化が今も根強く残っている。そしてその時、包まれるのはそのモノだけでなく心も一緒に包まれる。美しく「包む」ことで送り主の心を一緒に届ける包装は、日本人の美意識の下で生まれた民藝なのだなとしみじみ。

9月5日までやっているみたいなので是非。ちなみにこの日はめちゃくちゃ空いてたのでおすすめです。

包む-日本の伝統パッケージ

月曜日と火曜日、あまりに安穏と過ごしすぎたのか、記憶がほとんど無い。SNSを遡ってもどうやら音楽を聴いていたことと、風が強かったことくらいしか分からない。先週もこの「日々のこと」と題した日記を書いたことで、Twitterにほぼ毎日あげていた「黙ってたってすぎてゆく」と題した日記を書くのを止めてしまったことが実に悔やまれる。僕らの日々はこんなにも簡単に忘れ去られてしまうので、やはり日記を書くことは人類に必要なことだと痛感した。ロロ『父母姉僕弟君』から得た教訓が、今もこうして生かされている。

水曜日、弟の誕生日祝いに久方ぶりに実家で食事。下北の僕の城から実家までは電車で30分もかからない。帰省に旅情がないことと上京ができないことは都会育ちのディスアドバンテージだ。数年前に山の日として祝日認定された8月11日。弟は僕と違ってトライアスロンとかやっちゃうタイプのマッチョなのだけれども、彼はこの前日に一人で富士山に登ったらしい。ものの5時間で山頂まで行って下山まで済ませたと聞いて少し引き、ご来光を見る訳でもなくそのまま降りてきたという話を聞いて、あまりのマッチョっぷりに更に引いた。

実家には鳥が3羽とワンコが2匹いるのだけれども、皆一様に歳老いてきた。特にワンコはここ数年でめっきり老け込んでしまってかなり寂しい。耳が遠くなったようで呼びかけても反応が返ってこなかったり、一日中ソファで眠っていたりと、犬の晩年を感じさせる彼らの姿は実に穏やかだが、僕としてはやはり胸が締め付けられるものがある。彼らがまだ僕を覚えてくれている内にできる限り会いに行こうと思う。

金曜日、気が付けば今週も金曜日。慌ててタイムフリーのオードリーのANNを聴きながら仕事をした。よくラジオ聴きながら作業できるねと言われるのだが、おそらくこれは学生時代のバイト先の影響が大きい。そのバイト先では、バイトメンバーが座る席の方でずっとInter FMが流れていて、朝から晩までずっとInter FM漬けなのである。週によって推されている音楽が微妙に異なっていて、ROTH BART BARON『bIg HOPe』、Alexandros『ワタリドリ』、シャムキャッツ『GIRL AT THE BUS STOP』あたりはあの時期何度聴いたか分からない。

中でも15-17時でやっていた『Ready Steady George』という番組がすごく好きで、よく勤務中にリクエストを送ったものだ。KEMURIで2回くらい採用された覚えがある。彼らの番組ではアーティスト名と曲名を言わずに曲を流すこともあって、そういう時は時間をメモっておいて、後々で番組のHPに上がる番組表からその時間に流れていた曲がなんだったのかを確かめるのが習慣だった。昔台風クラブのライブを見に行った時、MCで石塚さんが同じことをしていると話していて胸が熱くなったのを僕は忘れない。そんな訳で僕は仕事をしながらもラジオが聴けるって訳なのです。聴きたい番組を全部聞こうとすると平気で毎週8時間くらいの可処分所得を持っていかれるので、ながらで聴ける人間で良かったとつくづく思う。

土曜日、髪を切りに美容院へ。『バスルームで髪を切る100の方法』、本当に大好きなのだけれどもパーフリの楽曲はカラオケに入っていない。昨今の小山田圭吾を取り巻く云々で更にそれが遠のいた気がして尚辛い。皆でタンバリンを叩きながら『ワイルド・サマー/ビートでゴーゴー』を歌う日をずっと夢見ている。

去年くらいから美容師さんとインスタのDMでやりとりをして予約をとるスタイルに変えたところ、比較的安定して髪を切りに行けている気がする。美容師さんがストーリーで「ここ空いてます!」と言ってくれると、「ほな行くか〜」という気持ちになれるのだよな。昔から締め切りが決まっていない、いつ行ってもいい状態で宙ぶらりんになっている予定に対してプロアクティブでいられない。歯医者も同じ理由で行けないの、いい歳した大人としてどうかと思うよな。もういっそ全部来いって言って欲しい。頑張って行くから。

今日、8月15日。昔からお盆をお盆らしく過ごす習慣があるわけではないのだが、8月15日はめっちゃお盆だなと毎年感じる。お盆といえばスケラッコ『盆の国』だ。今年も例年通りしっかりと読み返したぞ。最高のボーイミーツガールなので是非。

渋谷シネクイントで『サマーフィルムにのって』を鑑賞

僕は極端に映画を観ない。多分映画館で映画を観たのは、二年くらい前の『JOKER』が最後だったし、金ローもNetflixも、映画はここ1年くらいまともに観た覚えがない。週刊連載の漫画のスタイルに慣れ切った僕の脳は、引きと寄せとが短スパンで訪れるテンポのいい媒体でしか集中力が保たないのだ。漫画>Youtube>アニメ>ドラマと、一区切りが短ければ短いほど僕の興味は向きやすい。

さて、EMCのMこと松本壮史とロロ主催・三浦直之という完全俺得コンビによる今作。正直これすら観られないようでは僕は僕に失望していたかもしれない。松本氏の作品といえば江本祐介『ライトブルー』のPV『青葉家のテーブル』『それでも告白するみどりちゃん』、『デリバリーお姉さんNEO』と片っ端からチェックしてきた僕である。今作も当然のように大好物だった。

主演・伊藤万理華の溌溂とした演技も素晴らしいし、主人公3人の『映像研には手を出すな!』のような凸凹っぷりはまさに青春群像劇。この手の青春を描かせれば右に出る者のいない松本・三浦コンビが、舞台を当然のように文化祭に定めてきたことにはもはや驚きすらない。何より嬉しかったのは人の趣味嗜好を全肯定するようなブルーハワイ・花鈴の存在だよな。剣道部がど腐れキラキララブコメが好きでも良いし、学園のアイドルは日陰ものの敵じゃなくたって別にいい。女子高生が時代劇が大好きだろうが、ヤンキーが自前の改造自転車を乗り回そうが、あらゆる趣味嗜好や個性は全て肯定されるべきとでも言い切ってしまうような、人間讃歌のようなストーリーに興奮して思わず鼻息を荒げた。

偶々だろうが上映前に差し込まれたなみちえのコマーシャルも、この映画を象徴しているようで何度も思い出しては泣きそうになってしまう。

才能は、えっとね、一番楽しい努力が才能なんじゃないですかね。

他人と比べることで見つけられる特別って、実は特別じゃないかもしれなくて。

自分の中で自分だけが特別だと思うことが、本当の特別だから。

正直映画のことは何にも分からない僕だが、あのラストシーンが特別なものだってことくらいはわかる。全てあのシーンのためにあるような作品だとすら思った。照明を浴びた伊藤万理華のハッとするような不安定さや触れたら切れるような張り詰めた演技。なるほど映像はこうやって楽しむのかと少しばかりのヒントを得たような気分だ。帰り道には『さよならなんて云えないよ』をずっと聴いて帰った。

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