『それでも告白するみどりちゃん』というドラマが、ドラマというエンタメの地平を切り拓いた。
なにせインスタのストーリーという、未だかつてないプラットフォームで放送された革新的な作品である。予告を見た時点では一体どんなドラマになるのか想像もつかなかったが、いざ観始めるとこれがバッチリ現代っぽい。スマホで撮られたような縦長の映像と、3分という手軽な尺、そして24時間で消えてしまう儚さ。通勤中や仕事の休憩中に見慣れた画面でサクッと楽しめる気軽さは、テレビ離れが叫ばれる若者には馴染みが良いはずである。
そしてこの作品の魅力は何と言っても純度100%の愛。そのあまりのストレートさ、純真さに僕ら青春ゾンビは簡単に骨抜きにされてしまう。
本日2/12の18時まで限定で第5〜8話が再放送されているので、今すぐ『lute』のインスタをフォローしてこのドラマを観るんだ。
あらすじ
あらすじも何もない、タイトルの通り、みどりちゃん(りりか)が親友の倉知さん(亘理舞)と一緒に谷口くん(中島広稀)に告白をするだけだ。
ところがどっこい、脚本があの名作ドラマ『デリバリーお姉さんNEO』を手がけた松本壮史(EMC)と三浦直之(劇団ロロ)とくれば、その告白シーンが凡庸なものではないのは火を見るより明らかで、第1話ではダンス、第2話では超能力と、手を替え品を替え告白をするみどりちゃん。第3話ではMicrosoftのAI『りんな』の協力で、宇宙中の愛の言葉を一語に凝縮した言葉まで繰り出して愛を伝える。
その愛の密度は回を追うごとに高まっていき、最終話の告白の眩さ、尊さったらおニヤケを禁じ得ない。
そんな中でも僕が大好きなのは第6話。親友のクラッチこと倉知さんが主役の回は、殊更に素晴らしい。
親友・くらっち
毎回告白に付き合わされるくらっちとみどりちゃんとの友情の回である第6話。
私は谷口くんを好きなみどりちゃんが好きだ
不細工なシュートを放つみどりちゃんは、美しい
誰かを好きな顔があんなに魅力的なら、みどりちゃんが好きな今の私の顔も、
少しは明るくなってたらいいな
この台詞に象徴される2人の関係ったら尊く、若干15歳の彼女の演技と表情は、全くもって完璧な女子高生なのである。ちなみにりりかも中島広稀も23歳。亘理舞だけが15歳と正真正銘の女子高生で、そんな彼女の女子高生性がこの作品のフレッシュさに一役買っているのは言うまでも無い。
フルーツバスケットで磨いたバスケの腕前、みどりちゃんに教えてしんぜよう
とか
焼き付けて、まなこ
とか
(写真を撮る時に)よーい、どん
といった小ボケのような台詞もバッチリハマっていて良い。
『カードキャプターさくら』における大道寺知世のような立ち位置の彼女、そんな2人の友情の尊さは、このドラマの大きな見所の1つである。
みどりちゃん(りりか)の名演
くらっちが良ければ、当然主人公のりりか演じるみどりちゃんはもっと良い。
りりかと言えば、以前記事にも書いたYeYe『ゆらゆら』のPVでも素晴らしい存在感を発揮していたのが印象的だが、今回のみどりちゃんという一風変わった少女の役も素晴らしい。
明日の放課後、谷口くんに告白する。
(中略)
そして、きっと結ばれる
毎回そうノートに綴って始まるこのドラマ。最早妄想の域にすら達しているみどりちゃんの恋心。そもそもみどりちゃんが手を替え品を替え告白をするのは、その膨れ上がった想いを伝えるのに普通の告白じゃ足りないからで、想いを伝える媒体としてダンスや超能力やロングシュートを選択する彼女の恋心ったらある種病的だ。
だがそこは流石の松本&三浦コンビ。肥大化した恋心をポップに描くことに関して、彼らの右に出るものを僕は知らない。
そして更に、そんな厄介な役もクセのある脚本コンビをも乗りこなしてしまう、りりかという演者の実力が素晴らしいのだ。
第1話のダンスや第6話のロングシュートといった身体的な動きもさることながら、第7話で見せる悪魔的な表情、第8話での真摯な愛に満ちた表情。脚本家のクセのある台詞回しも、まるで自らの心から出た言葉のように繰り出す演技力。回を追うごとにみどりちゃんという役がりりかに馴染んで行くのを感じるし、第8話のみどりちゃんは文句の付けどころが見つからない完璧さ。
みどりちゃんという少女を演じる上で、彼女以上のみどりちゃんはいないんじゃないだろうか。
純度100%の愛
同じく松本&三浦コンビによる『デリバリーお姉さんNEO』の第1話は、20年間書き続けたラブレターの中から最高傑作のラブレターを探すという話。
どんな言葉も私の気持ちに全然足りてなくて
「好き」って言葉じゃ何も言えてないくらい、大好きだから
この世界観は完璧に『それでも告白するみどりちゃん』にも投影されていて、みどりちゃんはいろんな形で何度も告白する。時にはその告白は伝わらないし、訳の分からない宛先に届いてしまったりもする。それでもみどりちゃんは告白する。それは自分の気持ちがぴったりと収まる入れ物を探すような作業で、普通の告白じゃみどりちゃんの気持ちは欠片も収まらない。
そんなみどりちゃんが選んだ、最後の告白。それは「遠回りして遠回りして好きだと伝える」という方法。谷口くんを好きになった瞬間のこと、谷口くんに恋し続けてきた一瞬一秒のことを語るみどりちゃんは、表情一つ取っても、言葉一つ取っても、全力でその想いを表現していて、そのあまりの眩さに胸キュンが止まらない。
そんなみどりちゃんの輝きは、インスタのストーリーという機能の特性上、24時間で消えてしまう。24時間限定の儚くてまばゆい輝き。それがこのドラマ『それでも告白するみどりちゃん』なのだ。
おわりに
今後この形態でのドラマが増えるとは思わないけど、『それでも告白するみどりちゃん』はインスタっていう媒体にバッチリ合ってて、テン年代感が最高でした。DVDなりWebで公開なりして欲しい気持ちはあれど、この儚さも合わせて楽しむのがいいのであって、やっぱりインスタのストーリーで見るのがベストなのだろう。
あと江本祐介(EMC)の三十秒足らずの主題歌ももちろんいいよね。
この記事を公開したのが2/12の午後2時。残り4時間で消えてしまうこの作品を是非とも目撃して欲しい。