東郷清丸『2兆円』に2兆円の価値はあるのか

何故キングオブコメディの今野が突然『東郷清丸』などと名乗ってアルバムをリリースしたのか。その好奇心を抑えきれずApple Musicでこのアルバム『2兆円』を聞いたらば、なるほどこいつはキンコメ今野ではない。

溢れる宅録感、漂うサイケ感、隠しきれないやばいヤツ感、抑えられないメロウグルーヴ・・・!

「自分で値段をつけるなら、2兆円です」と自身のアルバムにオリンピック1回分の価値があるとのたまうこのルーキー、その1stアルバム『2兆円』にその価値があるのかどうか、語らせてください。








東郷清丸『2兆円』

時価総額2兆円のところ99.9999999%オフで2000円というイかれた価格設定のこのアルバム。そしてその2兆円を包むジャケットのクオリティもイかれている、サークルの合宿中に部屋でボーッとしてる瞬間を捉えたような写真に、黒塗り白抜きの色気のないフォント達、そしてそれらを何のてらいもなく隅っこに配置するそのセンス。まるでiPhoneのフリーアプリで作ったかのようなシンプルな佇まいは、ここ数年でリリースされたアルバムの中でもトップクラスのお粗末さである。

ところがいざ音楽を聴き始めると、そのサウンドは圧倒的に新しい。どうしたって耳につくザラッとした質感のギター。コーラスと歪みでギュワンギュワンになりつつもしっかりとした硬さを残した音は完全に耳に新しいし、ザックザクと耳に突き刺さる感じが心地よい。驚くことに、このギターの音だけでもバンドが完全に成り立っている。3ピースのシンプルな編成ながら、物足りなさなど微塵も感じないのは、ひとえにこの衝撃的なギターサウンドの力によるものだろう。

歌メロはかなりフィジカルを意識されたもので、その揺蕩い方の心地よさったらこの上無い。音程のアップダウンも耳にクるものがあるし、声の揺らぎ方もドラッギーだ。

見た目とギャップのある歌声が良いんだよなぁ。これまた珍しく、きしめんみたいにとにかく平たい。深みみたいなものは無くて、ただ脳の表面をさらりと撫でるような声。この声と揺らぎのあるサウンドと歌メロとの相性が抜群で、彼の楽曲はなかなかにサイケだ。

このMVなんてあまりのトリップ感に「イケない!」という感想が真っ先に浮かぶような最高のクオリティ。コメント欄の「how much cocaine do you need to make this video?」というコメントがこれまた最高。

DiscAの9曲入りに、宅録時代の遺物を惜しげも無く詰め込んだ51曲入りのDiscB。当初の「このアルバムに2兆円の価値はあるか」という議題に立ち戻るが、音楽に値段はつけられない、ということでお茶を濁させていただく。

 

東郷清丸、超良いよ

突然シーンに颯爽と現れた大型ルーキーという印象を受けがちだが、Disc2を聞けば彼の宅録時代の燻りの影みたいなものが感じられてエモい気持ちになる。60曲聞けとは言わないからDiscAの9曲だけでも一聴(1兆)の価値は大いにあるはずだ。

 

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