掲題の件である。
3年程前に『あの言葉、あの光』と『THANK YOU FOR THE MUSIC』を初めて聞いた印象は「ポップなフィッシュマンズ」という印象に過ぎなかったbonobos。もちろんその時から曲は良くて聞いていたのだが、サウンドから漂う「bonobosらしさ」みたいなものは希薄で、他の曲が正直ピンと来なかったのを覚えている。
ところが近年のbonobosはちょっとすごい。
最近たまたまYoutubeのレコメンの所に出てきたものだから聞いてみたのだが、あまりの良さに仕事中ユラユラしながらキーボードを叩いていたほどだ(珍しいことではない)
これから僕が今のbonobosの素晴らしさを語るから、よければこの曲を聞きながら読んでくれ。
メンバー変更
結成は2001年と実に17年のロングキャリアを持つbonobosというバンド。正直ヒットしているとは言い難い彼らの17年は当然険しいもので、1人、また1人とメンバーが脱退し、2015年の時点ではメンバーはVo.蔡とBa.森本を残すのみとなっていた。
そこから編成を大きく見直し、Gt. Key. Dr.を加えた5人体制での活動を開始した訳だが、この編成がバッチリだった。
2016年にリリースされた『23区』以降の楽曲を聞けばその変化は明らかで、誰が聞いてもbonobosというバンドの在り方がしっかりと示されているのだ。
元々うねりとグルーヴに定評のあったベース、そこにかっちりタイトなドラムとキーボードが合わさり極上のリズムを生むと、その上をギターとボーカルが自由に泳ぎ回る。水を得た魚、とは少し違うが、そうして今のbonobosは過去のサウンドやジャンルの壁といったしがらみから解き放たれ、その身体性から生まれる音楽を表現しうる最高のバンドとなった。
フィジカルの音楽
フィジカルの音楽というとCDとかレコードみたいになっちゃうのだが、これは完全に僕独自の感覚で、体制が変わってからのbonobosの楽曲はかなりフィジカルに寄せて作られていると感じる。
この「フィジカル」の定義が感覚的で大変恐縮なのだが、身体的な発生の仕方をした音楽、もっと単純に言えば聞いてて気持ちいいとか、歌った時クソ楽しい音楽がそう。ただパンクとかロックみたいなのとは違う。ヒップホップとかR&B、ファンク、ソウルとかの民族音楽系はかなりフィジカル。
いい音楽を聞いた時に自然と体が動くような、その心地よさに身を任せたままに作り上げられた音楽。そういう風に身体から湧き上がる音楽だから、「今ここにこの音置かずにどうすんの!」ってとこにドンピシャでスウィートな音を置いてくる。音を通してバンドの中のリズムが完璧に伝わってくる。思わず体が揺れるし、口ずさみたくなる。そういうのが僕が言うところのフィジカルの音楽です。
最近だとThe InternetとかNoname、日本だとceroとかがそうですよね。やっぱ黒人文化強いっすわ。
極上のボーカル
この『THANK YOU FOR THE MUSIC』という曲、2005年に書かれた曲で、10年以上の時を経て今このアレンジで演奏されている訳なのだが、元からいい曲だったのがそれを遥かに超えて極上の音楽として鳴らされている。
楽器陣の巧さもそうだが、ここはやはりフロントマンである蔡のボーカルについて言及しようじゃあないか。
まずシンプルに歌が上手い。音階の海を自由に泳ぎ回っている。歌が上手い人は音階の移行がものすごいスムースで、「歌っている」というより「音階の海を泳いでいる」という感じがある。更にはこういう曲を書くだけあってリズム感がとんでもない。強弱の付け方、発声から止めの瞬間までいちいち上手い。発する声発する声全てがドンピシャで気持ちいい。当然歌詞もリズムと響きを意識しているから浮いている部分が一箇所もない。サラサラと流れていって頭には残らないのに口ずさんでみると意外と覚えている。極上のリズムに最高の歌詞が乗っている証拠だ。
べた褒めもいいとこだが、それくらい今のbonobosは凄まじい。17年のロングキャリアの末にたどり着いた黄金時代。
2018年、今聞くべきは間違いなくbonobosだ。
bonobosは最高だよ?
3月のワンマンに行こうとしたらとっくにチケット売り切れていて悔しい。