スターウォーズ級の本格SF超大作、三宅乱丈『イムリ』は読んだ方がいい

恥ずかしながら、スターウォーズシリーズを一作も観たことがない。そしてその事を知人に話すと、大抵の場合「絶対観た方がいいよ」と大変ありがたいアドバイスをいただく。

そりゃあスターウォーズとかハリーポッター(ファンタビ含む)とか、あれだけ多くの人が虜になっているのだ、その面白さが常軌を逸したものであろうことは容易に想像できる。想像はできるのだけれども、今更あれに手を出すには、物語があまりにも壮大で長大過ぎやしないか。少なくとも映画にしてシリーズトータル10本に及ぶ超大作が、手に取りやすいという事は無いだろうよ。

そこで今回僕がご紹介する傑作、三宅乱丈『イムリ』だ。

既刊23巻、まだまだ手を出しやすいボリュームながら、その世界観の重厚さはスターウォーズにも引けを取らない。まだまだ無名に等しいこの作品が、日本漫画界を背負って立つ大傑作である事は、この僕が保証しようとも。

*ごく微量ですが、この作品の魅力を最大限に伝えるために若干のネタバレがあります。ご承知おきください。








三宅乱丈『イムリ』

まずはさっくりあらすじを。

『イムリ』の世界には、カーマ・イコル・イムリという3種の民族が存在する。その中でもカーマの文明は最も栄えており、イコルを奴隷化して使役する支配階層。それに対してイムリは原住民族で、伝統と慣習を大切にしながら森や山で暮らしている。この3種族間の民族星間戦争を主軸に、カーマ内での権力闘争、イムリとカーマによる種族間戦争、イコルの反乱等の出来事が複雑に絡みながら進んでいく超本格SFだ。

さて、「SF大作」と称される作品は往往にして物語が難解なものである。そしてこの『イムリ』も、御多分に洩れず実に複雑なストーリーを展開していく。恐らく4巻あたりまでは世界観やキャラクターを掴みづらく、だいぶ厳しいフェイズが続くはずだ。しかも三宅乱丈のイラストはなかなかにクセが強く、慣れるまでは「これ誰?初見なんだが?」という事態が頻発する。

ところがその我慢のフェイズを乗り越えたならば、安心してほしい、そこからはずっとご褒美ターンだ。

一応、巻末には以下のような用語やら階級やらを解説するページもある。

最初は全く意味が分からなかったけれども、10巻くらいまで読んでからこれ見ると驚くほどに合点がいく名解説。物語に混乱したらここに戻って確認すると理解が半端ない。逆に言うとこんなの作っちゃうくらい、精緻に複雑に作り上げられた世界観なのだ。

 

圧倒的に作り込まれた世界観

さてこの作品、何がすごいって精緻に張り巡らされた伏線と、重厚な世界観だ。

特にSF作品なだけあって、世界観の作り込みは圧倒的。漫画で言えば『AKIRA』や『風の谷のナウシカ』、『鋼の錬金術師』といった歴史的な名作とも比肩するレベルだ。

例えば、カーマには侵犯術という技術がある。これを使うと強制的に他人に真実を自白させたり、命令を聞かせたり、最終的には心なき奴隷に変えてしまう事もできる。カーマはこの技術でイコルを奴隷化し、支配している。そしてこの侵犯術というギミック1つで、この作品における戦いは血を流しあう原始的な戦いから、侵犯術を駆使した頭脳戦・心理戦へと展開していくのだ。

それ以外にも三宅乱丈が仕込んだギミックはいくつもあり、それらが物語を複雑に、そしてドラマティックに仕立て上げる。全てのギミックを理解した上で読む2周目の『イムリ』は、張り巡らされた伏線の数々も相まって、1周目よりも面白さが加速しているのがまたニクい。

 

「心」の物語

突出した脚本力と壮大な世界観で作り上げられたこの作品の、主題は意外にも「心」だ。

先述の侵犯術を使う事で、イコルの心を破壊して奴隷を作りあげるカーマ。しかしその実、侵犯術を使う事で心を失っているのはカーマだ。人を人とも思わず使い捨ての奴隷として扱ったり、自身の権力ためには身内すら権謀術数に陥れる。そうした文明の発展の裏でカーマは、次第に人の心を失っていった。

それに対して原始的な生活を続けるイムリは、何よりも心を大切にする。自然を慈しみ、集落を守り、家族と恋人を愛する。

主人公の少年・デュルクはカーマとして育てられたイムリだが、カーマの中でもとりわけ豊かな心を持つ優しい少年である。そんな彼が背負うイムリ・カーマ、それぞれの民族の運命と行く末。人としてのあり方、憎しみ、ひた向きさと優しさ。

後半に向かうにつれて加速していく物語と世界の残酷さ。その中でもデュルクの選択と希望はどこまでも正しい。心を引き裂かれながらも進み続ける彼のその姿に打たれながら、是非ともこの世界観に埋没してほしい。

 

『イムリ』は面白いぞ

SF作品として圧倒的な密度を誇るこの作品。現行の最新23巻では、物語は既に佳境。巻を追うごとに爆発的に加速する面白さ。追いつくなら今ですよ!

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