先日スランプになったのですが、それを自覚した瞬間に『大東京トイボックス』を読む事でモチベーションの回復を図りました。「早めのパブロン」的な感じです。
最初に読んだのは大学生の頃。当時はまだ連載していたし、もう5〜6年前の事。僕も去年から会社に勤めるようになり、この漫画を読み返すのは大学を卒業してから初めてのことだったのだが、当時と比べると面白さが圧倒的に、劇的に加速している。それは単純に、仕事の「し」の字もわからなかった大学生の僕が社会に出て、仕事にまつわるあれこれがわかるようになったからなのだろう。
僕とてまだまだ社会人2年目のひよっこだが、この作品を読むと心のガソリンがみるみる補充されていくのがわかる。胸の内に熱が宿り、手に汗を握りながらページを手繰る。
モチベーションに悩む大人、クリエイター、社会人に送りたい最高の漫画『大東京トイボックス』の話をさせてくれ。
大東京トイボックスのあらすじ
ざっくりいうと、ゲーム作りに魂を賭ける不器用な人間たちの話。
主人公はスタジオG3というゲーム制作の企画チーフの天川太陽という男。ゲームに誰よりも情熱を注ぐ男だが、過去に自身が作った大ヒット作『ソードクロニクル』が原因で、ゲーム業界、ひいてはコンテンツ産業全てを巻き込む大きな流れに巻き込まれることとなる。
アツすぎる名言
『大東京トイボックス』の名言と言ったら何と言っても太陽のこの名言。
仕様を一部、変更する!
エンジニア職にとって最も聞きたくない忌み言葉であろう「仕様変更」をデカデカと見開きで宣言するのがこの漫画の一番の見所。
誰しも、自分が取り組んでいる仕事や課題に対して疑問を感じた事はあるだろう。
「これって妥協じゃないだろうか」
「忙しいからって手を抜いていいのだろうか」
「もっと改善できるとこはないんだろうか」
「今僕が時間やチームのために妥協しているこだわりは、果たして切り捨てられる様なものだったんだっけ」
生きてく上でこういう自問っていくらでも産まれるし、社会人、もっといえばクリエイターなら尚更だ。
そして天川太陽という男は、自分が作るゲームに嘘をつけない。プロジェクトがどんなに遅延していても、チームにどれだけの残業を強いる事になろうとも、それを承知していながら、彼は妥協を許せない。チームのメンバーはそんな彼に、時に反発、時に賛同しながら、太陽の元で「面白さ」を追求したゲームを作っていく。
その姿は実に不器用で、「大人ならもっと上手くやれよ」と思う自分も確かにいるのだけれど、それ以上に僕の胸が叫ぶのは「これだよこれ!」という100%の共鳴だ。納期、チームワーク、クライアントのご機嫌取り、飲み会。どれも当たり前の様に大切だけれども、それらをぶっ壊してでも譲れない魂があったじゃないか。それはひょっとしたら自分にしか分からない小さなこだわりなのかもしれない。けれどもそれを曲げたら僕は僕でなくなってしまう。これはそういうギリギリのラインの話。
そしてそこを決して曲げない男のかっこよさを、この漫画は思い知らせてくれる訳だ。
僕はこういうクリエイター系の作品のアツさが大好物だ。『映像研には手を出すな!』で魅せる細部や設定へのこだわりだとか、『ロックンロールミシン』に見る、満足いかない作品を世に出すくらいなら全部壊すような狂気だとか。クリエイターがクリエイターたる理由が描かれる。それを描くのは当然小説家や漫画家といったクリエイターで、その自分の魂を抉り出すような表現に、僕の魂は震えるのだ。
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最後にもう一つ、この漫画で大好きな名言を引用しよう。
ゲームというのは何時間も、場合によっては何十時間とかかります。他人の人生をそれだけ拘束しておいて何も残らないようなものなど、一体何のために作るんです?
ブログもこういう気持ちで書かなきゃな。
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