何だこの漫画は。超渋谷系。そしてはちゃめちゃに面白いじゃないか。しかも1回目よりも2回目の方が、2回目よりも3回目の方が面白い。
ようよう春も終わろうかというこの時分に、この最高のボーイ・ミーツ・ガールの話をさせてくれ。
熊倉献『春と盆暗』
実はというと、この漫画の素晴らしさに気付いたのは2周目を読み終えたつい一昨日のことである。この漫画の素晴らしさを初回で咀嚼しきれなかった自分の愚かさ不甲斐なさを嘆くと同時に、この先読み返す度にあの心中にじんわりと広がる面白さを味わうことができるこの作品の面白さに万感の感謝を述べたい。
さて、この作品の魅力は何と言っても「エイリアンみたいな女の子」とユルい絵。
エイリアン系少女達の全くもって深意の無い発言を、必死に考え理解しようとするボンクラ男性陣の奔走ぶりがこの作品の醍醐味なのだが、僕は2回目を読み終えた時に大変なことに気付いてしまった。その姿って正に渋谷系そのものではないか!
「マイペースで気の強いちょっと不思議な女の子とナヨッとした情けない男の子のラブストーリー」こそ僕の考える渋谷系の王道であって、この作品はぴったし直球ど真ん中。その事に気付いてからというもの、何度も何度も読み返す度にボンクラ男性陣が不思議ガールズに振り回されているその姿が『Flipper’s Guitar』『Cymbals』『Pizzicato Five』の超王道渋谷系ポップスとも重なり、僕の琴線を揺らすこと揺らすこと。そして世の全ての男性には「Cymbalsの頃の土岐麻子のような女の子に振り回されたい」という願望を持っているので、この作品が男性の心を鷲掴みにする理由も分かるというもの。
そしてもう一点、この作品を至上のものとしているのはなんとも言えない柔らかい雰囲気の絵のタッチである。ボンクラ少年の見事なまでのボンクラ感。初登場シーンからすでにボンクラ感が漂っているのだから見事という他ない。風景にしたって実は以外と芸が細くて、特にエイリアンガールズの不思議な脳内空間が現実世界に表れるシーンなどは実に見事に日常と非日常がないまぜになった素敵な1コマを書いてくれる。そして何より女性陣が可愛い。
つまるところ、この『春と盆暗』という漫画は、作風と画風が見事にマッチした最高の渋谷系ボップス漫画なのである。
盆暗に春よ来い
Cymbalsの『午前8時の脱走計画』なんかは正にこの漫画にぴったりの曲なので、同時に楽しむとマリアージュが楽しめて超最高。
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