旅する音楽。濃密な異国情緒に酔いしれる、VIDEOTAPEMUSIC『On The Air』

正に旅する音楽。

中国、インドネシア、バリ、かと思いきや昭和の日本。世界各地の音楽を文字通り採集して1枚のアルバムへと落とし込んだ今作。こんな音楽が聞けるものかと感動すら覚える出来栄えである。

音楽家でありながら映像作家、VIDEOTAPEMUSICの新作アルバム。とにかく一回聞いてほしいので熱愛レビュー行きます!



『VIDEOTAPEMUSIC』の音楽性

例えばMONDOGROSSO『ラビリンス』のMVを見た後に香港に行きたくなるような。

森見登美彦作品を読んだ後に京都に行きたくなるような。

濃密な地域性を含んだ作品に触れた時、行った事もないはずの土地の空気感や街並みや人々の様子までもを見知った様な気になるあの感覚がこの『On The Air』にはある。最高にメロウでドリーミーで、エキゾチックでどこかノスタルジック。そんな作品の正体をこれから暴いてゆきたいと思う。

VIDEOTAPEMUSICの音楽作品の真髄は、何と言ってもVHSテープからのサンプリングにある。彼の楽曲の根底に流れるノスタルジックな空気感は間違いなくそこに起因しているし、もはやVHSってだけで無条件に懐かしくてエモいじゃないか。

さらに今作では、フィールドレコーディングなる手法も使われているという。

今まで通りVHSテープからのサンプリングは多用しているものの、『世界各国の夜』以降の作曲方法として、実際に街を歩きまわって(ときに車で走り回り)風景を見ながらフィールドレコーディングをして、その中で感じた事を曲にしたり、目に見えなかったり形を持たない空気中に漂っているもの(ON THE AIR)をモチーフに作られたアルバムとなっています。

-VIDEOTAPEMUSIC 『On The Air』公式HP

こうした生のサンプリングを駆使することによって、目には見えない、実際にその街に行かなければわからない人々の生活感や空気を楽曲の中に閉じ込めることに成功しているわけだ。

トークボックスの奇妙なボーカルとチャイナサウンドが絶妙に絡み合う『ポンティアナ』や、『熱い砂のルンバ』に漂うアラビアンな雰囲気、『Fiction Romance』のメロウなバカンス感。曲ごとに全く違う趣を見せる彼の音楽の高密度な”現地感”はそうやって作られている。

さらに今作ではサポートメンバーに思い出野郎Aチームの面々を迎えている事もあり、ゆったりとグルーヴィーなサウンドを形作るのに一役買っている。同じカクバリズム所属だし、演奏力もあって楽曲の幅の広い思い出野郎のメンバー達とVIDEOTAPEMUSICの相性はいうまでもなく最高。PVにも度々登場するのだが、ビジュアルがまた妙にマッチしているのである。

さらにさらに注目すべきはアルバム曲順の妙であろう。8曲目『Her Favorite Song』で映画の一幕の様なドリーミーな少女の声を聞かせたかと思えば、続く9曲目の女性ラッパー・NOPPALをフィーチャーした『Her Favorite Moments』では大人のアメリカンでワイルドな女性性をラップに乗せて歌い上げる。そして最もボーカル色の強いこの曲に続くのは、今作においても象徴的な楽曲である『Fiction Romance』。メロウでありながらエキゾチックなサウンドで僕らを遠く異国の地までトバしたかと思えば、最後に『煙突』の空虚さと切なさで一気に現実に引き戻すのである。

どんな旅であっても旅であるからには終わりが来る。この演出は正に「終わりがあるから旅なんだよ」とでも言わんばかりではないか。

アルバム1枚で僕らをどこまでも連れ回してくれるこのアルバム。この魅力はとても1000字2000字では語り尽くせるものではない。是非とも手にとって聞いて欲しい1枚である。

 

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思い出野郎Aチーム – 『夜のすべて』

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思い出野郎Aチーム – 『ダンスに間に合う』

VIDEOTAPEMUSIC『ON THE AIR』、超いいよ

遠く聞こえる潮騒や、ネオンサインに照らされる街並みがありありと浮かぶ様な濃厚な音楽。

このアルバム聞くとどうもドバイあたりに行きたくなります。

 

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