鳥肌モノの歌声と情念。Mitski『Be the Cowboy』

鳥肌モノの歌声と情念。Mitski『Be the Cowboy』

Mitskiを聴く時はボリュームを一つか二つ、上げて聴くようにしている。彼女の息遣いや声色、その歌に込めた感情の一つ一つを、余すことなく受け止めるためだ。

聴くのにある種の覚悟を要するほどの熱量で込められた情念。前作から彼女のSSWとしてのスタンスは一貫していて、今作においても感性をぶん殴られるような感情の塊みたいな音楽は健在だ。








Mitski『Be the Cowboy』

まずは何も言わずアルバムのオープナー、『Geyser』を聴いて欲しい。

流石と言うべきか、心の準備はしていたものの初っ端から予想を遥かに上回る感情のマグマのようなボーカルに圧倒される。

ゆったりとソロを取るようにボーカルから始まり、少しずつ音圧を増して行くサウンド。そして大サビ、堪えきれず走り出すように音量と迫力を増すシンセサイザーとボーカル。「Geyser」とは「噴き出す」という意味の単語だが、この曲は正に、彼女の行き場を失った感情が止めどなく噴き出してくるような曲だ。身を焦がすような灼熱の想いに焼かれながら、悶え苦しみながら歌を絞り出すような、そんなヒリつくような感情が音を通じて僕らにこれでもかと言うほど伝わる。

そしてその余韻も冷めやらぬ内、たったの2分と24秒でこの曲は終わりを迎える。それから先はもう彼女の独壇場だ。なにせ僕らの耳と心は既に奪われている。

思えばこのアルバム、その楽曲のバラエティの豊かさは前作の比ではない。『Me and My Husband』はシンプルにポップスとしての形に仕上がっているし、リード曲である『Nobody』なんて完全にフレンチポップのような出で立ちだ。これら以外にも全編通してキーボード・シンセ・ホーンが印象的な今作。前作のグランジ偏重なサウンドと比べるとその多彩さには驚くばかりだ。

当然その根底に、彼女のアーティストとしての矜恃が一本芯として通っていて、その証拠にボーカルが一切重ねられていない。コーラス無しで本当の意味でのボーカル一本勝負。その決意と覚悟は僕ら聴き手にも伝わるし、彼女の凄味をより一層引き立てている。時代とは逆行するように、その類稀なシンガーとしての才能を伸ばし続けるMitski。これは益々前回の来日公演を見逃したのが悔やまれるところだ。

この感情を曝け出すような音楽表現、女性SSWという肩書きから言ってもSt.Vincentを彷彿とさせる。特に去年出たアルバム、MASSEDUCTIONの『Hang On Me』や『New York』あたりからはすごく近いものを感じるのだ。

記事:St.Vincent『MASSEDUCTION』

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ついでに最近僕の中で女性SSWがあまりにも熱いの国内勢からカネコアヤノのご紹介だ。彼女もMitskiほどではないものの、なかなかのストロングスタイルだ。こういう歌声に感情や人間味がガシガシ乗っかっているボーカル、問答無用で好きになってしまうよねー。

記事:少しだけスペシャルな日常を歌うSSW、カネコアヤノ 『祝祭』

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あとは女々しく情感豊かって点でこいつだな。毛皮のマリーズの志磨遼平が作詞作曲ってだけで最高なのに、それに女々しさの権化みたいな男、奇妙礼太郎のボーカルが見事にマッチしていて最高の楽曲。

記事:作詞作曲 志磨遼平、奇妙礼太郎『恋愛重症』が最高に女々しい

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Mitski、良すぎ

14曲入りで33分とコンパクトなボリュームではあるが、このアルバムと過ごす30分間の密度といったらこの上ない。そしてMitskiがこれからのシーンを牽引する稀代のシンガーであることに疑いの余地はない。既に各種メディアや界隈からの評価も高く、2018年ベストの呼び声も高いこの名盤、聴いておいた方が良いだろうよ。

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