田村由美『7SEEDS』が完結したので魅力を語ります

いい漫画

またもや大好きな漫画が完結しました。超感動の大団円。本当にお疲れ様でした。

それでも町は廻っている』や『シュトヘル』、第一部が完結を迎えた『BLUE GIANT』に続いてこの『7SEEDS』。僕にとっては2017年は完結の年となりそうです。

この歴史に残る大傑作を一人でも多くの人に読んでもらいたいので、オタク、プレゼン行きます!!!

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『7SEEDS』の魅力

ページをめくるたびに手に汗握り、魂は震え、感動の涙が溢れ出す。とにかく後世に語り継がれるべき大傑作ではあるのですが、大傑作であるが故に語るべき事が多すぎて長くなりそうなので、最初に要点サマっておきます。

  • サバイバル漫画の金字塔
  • 少女漫画らしからぬスケールの大きさと迫力
  • 少女漫画らしい最高の台詞回しとヒューマンドラマ
  • 登場人物達の成長の過程
  • 緻密に想定された未来の世界のリアリティ・世界観
  • 計算され尽くした希望と絶望のバランス感

思うにこの作品、少女漫画である事がこの作品をマスタピースならしめる最大の要因であるにも関わらず、少女漫画であるが故に多くの人に軽視、あるいは無視されてしまっている作品である気がします。

美しいものに性差が無いように、面白い作品に掲載誌なんて関係ありません。コロコロコミックにだって傑作はあります。知らんけど。

 

あらすじ

巨大な隕石の衝突によって地球の滅亡が避けられない事が判明した未来。人類の滅亡を避けるために、各国の首脳陣が『7SEEDS プロジェクト』と呼ばれる計画を立てる。それは若くて健康な人間をコールドスリープ状態にし、地球が隕石の衝突によって滅亡してから、地球環境が変化し続けるであろう期間を眠らせ続け、再び人間が生きていける状態になったとコンピューターが判断したタイミングで解凍し、未来に人類の種を残そうとするというもの。

春・夏A・夏B・秋・冬の全5チームが存在し、それぞれのチームのガイド(後述)5名を含めた全40名が未来の地球に放り出され、人類と文明が滅亡した未来で生活していく、というストーリー。

未来の地球は、巨大化した昆虫や獣、不安定な気候、未知の病気などが人間を襲う世界。そんな凶悪な世界を前に、非力な人間という生物が知恵と技術を駆使して生き延びて行くのがこの作品の一番の醍醐味です。

 

登場人物

僕的にこの作品の最大の魅力の一つが、キャラクター達の持つ能力(異能ではない)やバックグラウンドなんですよねぇ。

この未来の世界に放り込まれる人間は、様々な身体的・能力的な要素や金とコネと思惑が絡み合って選抜されています。そんな中でも重視されているのは、日本の文化を未来の世界に残すこと。文明が滅ぶことで失われる技術や知識、音楽や絵画といった文化そのもの、宗教や法律などの概念などなど。人間が数千年の歴史の中で作り上げてきた様々なものを残すために、生きた人間を未来に放り込むわけです。

なので登場人物の中には甲子園の若きヒーローだとか、柔道選手、音楽家、美術家、ベンチャー企業の社長など、それぞれが得意な分野を持っている。それ以外にも海女とか、図鑑を全部暗記してる天才少年とか、瞬間記憶能力者とか、お坊さんとか、特殊な能力を持った人物もいて、こいつらがまたいい仕事をするんです。

ただし、それは春・秋・冬のチームの話で、夏A・夏Bのチームはちょっと事情が違います。

 

夏A

この漫画が面白い一番のフックはここだと思ってます。

他のチームのメンバーが何も知らずに未来に放り出された中、この夏のAチームの7人だけは未来で生き残る事を想定した訓練を受けてきた、いわばサバイバルのエリートチームなんです。

物心がついた時から「未来に行く」ためだけに訓練を受け続けてきた彼らは、『火・水・風・土・動物・植物・医療』の科目から2つを選び、専門的な訓練を受け続けてきました。そして17歳になるタイミングで「未来に行く」7人を選ぶための最終テストが始まるのですが、このテストで生き残る事ができた7人を除いて、全ての子供達は先生や先生に仕掛けられた罠によって殺されていたという壮絶な過去を持った7人が、夏のAチームのメンバーなのです。

彼らは生き残るための知識や技術が半端ない。ボルダリングは必修科目だし、生活拠点の作り方や食物の調達・加工方法に加え、ある者はハングライダーで空が飛べたり、ある者は医療の知識に秀でていたりと、サバイバル漫画においてチートとも言えるスペックを持った7人がいる事で、この漫画の幅がものすごく広がっているし、僕らのようなサバイバル漫画好きを最も唸らせるのがこのポイントなんですよね。

しかし、未来の世界で他の一般人チームを導くリーダーの役割を期待されて訓練を受け続けたはずの夏のAチームは、親のいない環境や過酷な最終テストの影響から、人格的に問題の残ったメンバーが多くなってしまっているんです。

サバイバルだけではなく、人間同士の関わり合いや成長も主題の一つであるこの作品において、彼らの存在は非常に重要なファクターとなってくるわけです。

 

夏B

複数の主人公が存在するこの作品において、一番最初(要するに第1巻)に描かれ、最後まで一番の主人公として描かれたのがこの夏のBチーム。

他のチームが前述の条件で優れた人間だけがチョイスされたのに対し「待って、温室育ちばっかってっちょっと危なくね?もっとワルい奴らとかダメな奴らのチームがあった方がリスクなくね?」と考えたお偉いさんが作ったチーム、それが夏のBチームです。引きこもりや不良や傷害事件起こしたやつなどなど、社会不適合者が集まっている夏のBチームですが、楽観的に日々を過ごし、未来での生活を案外こなしていきます。

ところが夏のAチームからしてみると、なんのテストも受けずに能天気に未来へ来れて、知識も警戒心もなくのうのうと生活をしているこいつらが気に食わない。そんな彼らは衝突したり、時に助け合ったりして危機を乗り越えて行くのですが、その度にドラマが生まれるんですよね〜。

社会でのステータスとか能力なんて無人島やら未来の地球やらの大自然の中では何にもならないという、全てのサバイバル漫画が伝えたいであろうメッセージを教えてくれます。

 

『7SEEDS』の魅力

なんと言っても希望と絶望の絶妙なバランスでしょうね。

人類が文明の頂点でなくなった世界では、人間なんて簡単に死にます。猛獣や昆虫に襲われたり、海で溺れたり、毒のある植物を食べてしまったり、単純に食べるものがなくて餓死したり。何千年後の世界なのかもわからずに旅を続ける中で、明らかになるのは人類が完全に滅亡したという事実ばかり。残されたのは僅か40名弱の人間だけなんて、考えるだけで絶望だらけです。

ただ、そんな過酷な世界にも希望はあるんです。

アカギも言ってました。人は先に希望があれば焼かれながらでも付いてくるって。

 

希望その①:カップル

全国民の中からピックアップされたのはわずか40人。そんな中にカップルが二人とも含まれている確率って何%あるんでしょうか。奇跡としか呼びようの無いそんな奇跡が、7SEEDSでは起こってるんです!!!

ところが日本のお偉方は意地悪なので、最初っから同じチームに二人を入れるなんて事はしてくれません。解凍される時期もされる場所もバラバラな二人。最初はお互いの恋人が未来に来ている事なんて知る由もありません。ですが次第に旅を進めて行く中、お互いの残した足跡を見て存在を確認しあう二人。お互い未来に来ている事は分かっているのに会えないもどかしさ。

会えそうで会えない。でも”いる”、生きている。

二人は未来の世界で生きて出会うことができるのか!?

その絶妙な希望の塩梅が、この作品は素晴らしいのです。

 

希望その②:妊娠

当然未来の世界に人間を残した以上、その人間達が新しい命を授からないと人類に未来は無いわけで。

未来で出会った1組のカップルが命を授かるのですが、それを巡って新しい命を産みたい人間、自分たちを無理矢理未来に放り出した人間達の思惑通りに命を産み出す事に反対する人間、こんな過酷な環境で出産を迎えることに反対する人間、命の保証なんてない過酷な世界に産むことが子供にとって良いことなのか迷う人間などなど、様々な考えや対立が生まれてしまうんですね。

そんな命を巡った対立の一つ一つにドラマがあって、その対立をすべて乗り越えた先に新たな命が生まれるシーンは感動そのもの。人が親になる事の重さみたいなのも同時に描かれていて、涙モノです。

 

何度も押し寄せる感動の津波

この漫画、かなり骨太ではありますが前提として少女漫画です。

恋愛は常に物語の主軸にあるし、人間関係や心の成長も常に描かれ続けるこの作品の大きなテーマです。当然生まれ続けるヒューマンドラマ。止まない対立、そして感動的な和解。深まるトラウマとそれを埋める大きな愛。これに関しては筆舌に尽くし難い。

とにかく35巻の中に人間の全ての心が詰まっている。そんな大言を吐いたとしても過言ではないのです。

ちなみに僕の一押しは安吾が自分を許すシーン。完全に大涙が溢れます。

 

『7SEEDS』を読もうよ

7SEEDSの面白さが少しでも伝わりましたでしょうか!!!

35巻と長編ではあるものの、物語に無駄や寄り道は一切なく、あれだけの世界観の漫画がこんなに綺麗に終わるのかと驚くほどのまとまりの良さ。あなたが1巻を読み始めてしまったならば、その日の内に最終巻を読み進めている事でしょう。

自信を持ってオススメできる、最高の傑作のうちの一つです。是非読んでみてください。

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