石黒正数『それでも町は廻っている』が完結したので魅力を語ります
『それ町』の最終巻が今日発売された。別に死ぬまで続くとは全く思っていなかったけどなんとなく終わりなんてこない気がしていたあの『それ町』が終わるっていうのはどうもしっくりこない。『ネムルバカ』を始めて読んだ衝撃で買い始めた『それ町』だったが、3巻くらい読むとどうも先が読みたくなる。別に続きが気になっているわけじゃなくて、続きがあるなら読みたいって感じ。読むのに脳のリソース使わないし、ちょっとだけ空いた時間に自分の好きなあの話は何巻だったっけかって探しながら結局見つからずに他の話を読んじゃうみたいな読み方ができる貴重な漫画だったなぁ。
ここであとがきの石黒先生の言葉を引用しておく。
『それ町』歩鳥の高校三年間という、人生の過程のひと時を時系列もバラバラに描いた物なので、最終話が物語の終着点というわけでもありません。できますれば全16巻を行きつ戻りつ廻っていただけると大変嬉しいです。
作者が言うんだから間違いない。そもそも1巻から順に読むという普通に漫画の読み方はこの作品には適用されないのである。これから先も、「そういえばあの話読みたいなぁ」と思った時に読むようにしたい。けど時系列がバラバラなので見つけるのに大変苦労する。それもまたいいとこなんだけれども。
とは言っても最終話は最終話。『ネムルバカ』で僕を魅了してくれたような最高の大団円を迎えてくれるのかと思いきや、終わりよければ全てよしってこんなに思った漫画もない。(ここでいう終わりというのは物語の最終話ではなくエピローグのこと) らしいって言えばらしいし、ひどいって言えばひどいけど、僕はすごいよかったなって思いましたよ? どうやら連載でのオチは本当にあのオチだったらしいので、そりゃネットでは叩かれちゃうよな。でも単行本にしかない最後数ページのエピローグは本当に素晴らしかった。あの大人びた歩鳥の姿は本当に綺麗で思い出すだけでため息が出ちゃうし、あのオチでがっかりしちゃった読者の溜飲もだだ下がりである。あのシーンは今後何回も思い返すんだろうなぁ。僕の宝物の一つになりました。
単行本最後の話の題名は『少女A』、言うまでもなく『ネムルバカ』で先輩がデビューした際の名前である。必死に共通項を見つけようとしたけれども大して見つからなかった。ひょっとしてただの思いつきなのかなとも思う。あの人に限ってそんなことはないんだろうけれども僕にはまだ早いのかもしれない。
それにしても16巻、見どころばかりである。タッツンとのピンポンポン、タッツンの告白、タッツンとの看板掃除、思い返してみるとタッツンとのシーンばかりであるが、僕がこの作品において、歩鳥とタッツンの関係性ほど好きなものもない。親友って言っていいのかも微妙な距離感だけれども、彼女らの関係性がどんなものだったのかは作中でタッツンがしっかりと述べてくれている。
もし私が告白すると 上手くいってもフラれてもどっちにしろあんたの望まないことが起きる
メイド長がいて あんたと私がバイトして 時々真田くんが来て、、、
っていうあの感じが 何かの形で変わるよ
あんたが人一倍好きであろう「いつもの感じ」が変わっちゃうかもしれないつってんの!
このセリフをタイプしながら、頭では、江本裕介『ライトブルー』のPVが流れていた。比較的青春要素の薄い学園コメディであるこの作品が、一番青春していたポイントは紛れもなくこの「いつもの感じ」という言葉に集約されるだろう。それに対する歩鳥の返答もまた紛れもない「青春」である。
嬉しいなぁ タッツンがそんな事 見抜いているなんて。
「変わらない」とかそんな事より 何倍も尊いよ
なんて尊い二人なんだろう。もちろんタッツンだけじゃなくて、紺先輩との話も大好きだし、真田とゴリの繰り広げる男子高校生感も大好き。妹のゆきこが防犯ブザーを手榴弾みたいにして投げるシーンは腹抱えて笑ったし、エビちゃんのキャラクターも実はかなり好き。ああ、話してるうちにどんどん読みたくなってきた。早く時間を作って読み直さなければ。
連載当時からゆるい作品だったが、その連載が終わってみても尚ゆるさの残る不思議な作品だなぁと思う。今でも終わった感じはしていないし、きっとこれから先も何回も読み返す。『ネムルバカ』に至ってはもう何十回読んだかわからない。あんなオチではビクともしないくらいには僕は『それ町』が好きだったらしい。
おわりに
石黒先生、お疲れ様でした。
Twitterいっつも拝見してます。
次回作も楽しみにしております。
『それ町』楽しませていただきました。ありがとうございました
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