怖いもの見たさ、という言葉があるが、今このページを開いたあなたの心情はこれに近いものがあるはずである。『苺しろ味噌つけ麺』というフレーズは妖気を発し、一度目にしたが最後心に絡みついて未知の味が気になり続ける呪いとなること請け合いである。
普通の人であれば敬遠しがちなトリッキーラーメンではあるが何を隠そう相手はスパイスの妙手・桑嶋さんである。初めて出会った『もみじ冷やしつけ麺』からは彼がハードなスパイスの使い手であることが、晩夏に出会った『白桃つけ麺』からは桑嶋のフルーツつけ麺にハズレなしということが火を見るよりも明らかである。何より僕の桑嶋季節麺への信頼が厚すぎるので秒で注文
桑嶋の5月限定の季節麺の記事です。相変わらず天才。よろしければ。
感想
これが噂の『苺しろ味噌つけ麺』950円。
まず出てきての印象は強烈な苺の香りである。真っ赤なレンゲにたっぷりと乗っているのは細くカットされたとちおとめ。スープからも甘い苺の香りが立ち上っていてその辺のショートケーキなんかより圧倒的に苺である。正直この時点ではおおよそラーメンに期待されるべき要素がほとんど見当たらない。
大将曰く苺をスープに混ぜ、丼に添えてあるレモンもスープに絞り入れて食べるらしい。
だが、それに従ってばかりではいけない。彼がこの一杯のラーメンに仕掛けたトリックの数々を見破るためには、常に気を緩ませることなくありとあらゆる角度からラーメンを検証しなければならない。謎解きはディナーの後で、とはいかない。事件は現場で起こっているのだ。
まずは苺を入れる前にスープを一口。めっっっちゃ甘い。苺の甘みと白味噌のまろやかさでラーメンらしからぬスウィーツ感である。麺よりもアイスクリームとかつけて食べたい。苺を入れてからもスープを一口。苺の酸味が加わってよりフルーティーになっている・・・
この時点で若干「桑嶋さん、今回はちょっと焦っちゃったんじゃないの〜?」と一瞬でも疑いが鎌首をもたげてしまった自分を恥じたのはこの直後、麺を何もつけずに食べた瞬間である。麺とクミンが和えてあるのは見た目から分かっていたが、オレガノオイルも入ってるらしい。唯一無二のスパイス使いは健在である。というかこの麺がとにかく美味い!なんならこのまま食べても相当美味い!一杯麺だけでも食べられるレベルなのでまずは麺だけで試してほしい!
つけ麺をつけ麺として食べるまでに900文字も書いてしまいましたが、つけ麺の感想は「天才かよ」って一言に尽きます。スープの甘みはしっかりと感じますが、麺のクミンがその甘さをグッと引き締めてくれる。強烈な甘さとフルーティーがやってきても最後に舌に残るのはスパイスの爽やかさっていうベストな組み合わせ。苺が強すぎたり、スパイスが強すぎたりしてもこの後味にはならないだろうっていう、フルーツとスパイスの絶妙なバランス感覚がとんでもない。大将曰く「思いつき」らしいがこんなの思いつく発想がまずすごい。んで苺っていう一番ラーメンからは縁遠そうなフルーツを使ってここまで完成度の高いつけ麺に仕上げているのは唯一無二ですよ。
ちなみにこの人は超ハードワーカーなので新作を出す前は大体寝ないで試作してる。今日もすごい疲れた顔をしていたし、何故か眼鏡のつるが片方折れてて大変そうだった。被災者みたいになってた。ご自愛くださいっていっつも思ってます。
とにかく品名からじゃ全く予想できない味だし、相変わらず美味しさが予想の遥か斜め上を行くクオリティで大満足。怖いもの見たさでいいから一回チャレンジしてみてほしい一杯でした。
ラーメン女子博にも!
ちなみに桑嶋で苺しろ味噌つけ麺が食べられるのは2月いっぱいまでですが、3/16〜3/20に横浜赤レンガ倉庫で行われるラーメン女子博にも出るらしい。行く人は是非食べてみてください。
*5/21 Update
桑嶋の5月限定の季節麺の記事です。相変わらず天才。よろしければ。