ゲーム音楽と宇宙的SFと爆発的なキャッチーさ。Louis Cole(ルイス・コール)『Time』

いい音楽

Flying Lotusが主宰するレーベル、『Brainfeeder』の勢いが止まらない。

Kamashi Washington、Thundercat、Ross From Friend、Dorian Concept etc…錚々たる面々が名を連ね、今年のソニマニには「Brainfeeder Night」なるものが出現し、渋谷で出展されたポップアップショップでは主要なグッズが初日で完売続出など、飛ぶ鳥を落とす勢いとは正にこの事。

そんな新進気鋭の超レーベル『Brainfeeder』から送り込まれた新たな刺客、Louis Coleの新譜『Time』が、平気でぶっ飛ぶレベルの名盤だ。今日はそんな名盤と名作『AKIRA』とのマリアージュを提案したい。

ルイス・コール『Time』

才能、天才。どのメディアを覗いても、彼を評するのに用いられているのはこの辺の言葉ばかり。ひとまず僕はこれらの表現は避けようかな。

Knowerのドラマーとしても知られる彼が、ドラムからボーカル、キーボードと多くの楽器を操って作り上げられたこのアルバム。一聴して驚くのはその鮮烈さと宇宙的な世界観。

オープナー『Weird Part Of The Night』からして、開始数秒で僕らの心を鷲掴みにするキャッチーさがとんでもない。どこかゲーム音楽のようなレトロな音像は残しつつ、ドラマーとしての彼の技量が楽曲に吹き込むファンクネスは超一級。そしてどこか近未来SFを思わせる宇宙的な世界観。シンセサイザーの浮遊感と、エレクトロなボーカルや多用されるファルセットの電子音楽的なアプローチ。それらが作り上げるのはファンクでポップでエレクトロな宇宙空間のような音楽世界だ。

なるほど、自身が影響を受けたと語るのは『マリオカート』『スターフォックス』といったゲームであったり、『トロン』『2001年宇宙の旅』といったSFであったりと、いずれもこのアルバムの世界観に色濃い影響を与えているのは明らか。

となると、やはり連想されるのは日本が世界に誇る不朽の名作、大友克洋『AKIRA』だ。

何が良いってこのアルバム、ただお上品にまとまっている訳じゃない。M5『Real Life』、M7『Tunnels Tunnels In The Air』、M9『Freaky Times』あたりから感じるのは、暴力的なまでのキャッチーさ。積み上げたキャッチーさでぶん殴るような、少しばかり粗暴な側面を併せ持つこれらの楽曲達。これは言わば不良、そう、健康優良不良少年だぜ。

そして何より、このアルバムに漂うレトロと近未来がないまぜになった世界観は、正に『AKIRA』のそれと驚くほどリンクしている。M1、M5あたりはバイクに跨って街を駆け抜ける金田達が、M2『When You Are Ugly(feat.Genevieve Artadi)』はネオンとドラッグにまみれたネオ東京の夜の街並みが。それ以外にも、このアルバムを聴いていると思い浮かぶ数々のシーン。荒廃した未来都市、宇宙、穴の空いた月、超能力、ドラッグ、不良少年、バイク。そんな中で描かれる少年たちの出会いと別れと衝突と友情。

M13『Things』こそはこのアルバムの爆心地であると確信すらしている名曲だが、僕が『AKIRA』の映像化を一任されたとすればエンディングは間違いなくこの曲だ。

かのカニエ・ウエストも自身に影響を与えたと語る大名作『AKIRA』。何分古い作品だし、古典作品には手が出しにくいという事も重々承知だ。だがそれでも、2018年を代表するような傑作、ルイス・コール『Time』とのシナジーはそれを埋めて余りある良さがある。和菓子にお茶が合うように、餃子にビールが伴うように、ただ『AKIRA』を楽しむのも良いが、そこに更に音楽を合わせればその素晴らしさたるや掛け値無しに最高だ。

ルイス・コール『Time』を聴いてくれ

間違いなく今年のアルバム十指には入ってくるこの超名盤。界隈でも絶賛の嵐だし、どうやら来日公演もあるらしいと風の噂で耳にした。今この名盤を聴かずに何を聴けば良いのか。甚だ疑問である。

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