友情を超えた2人の関係性、『BANANA FISH』が本気で面白い。

いいドラマ

『BANANA FISH』を知っているだろうか。

ある種の人々の間ではバイブルとして今も語り継がれている名作で、連載されていたのは1985年〜1994年。あのONE PIECEですら1997年の連載開始という事を考えれば、最早古典作品と言っても差し支えは無かろう。そして完結から24年が経った今年、遂にノイタミナ枠でアニメ化が実現した作品でもある。

このアニメというのが全くもって会心の出来で、僕は毎週Amazon Primeビデオに更新されるのを心待ちにしている訳だが、特に第9話にはやられた。あまりの衝撃にしばらく身動きが取れなかった程だ。

恥ずかしながら僕は原作は未読なのだが、ネットの評判は上々。曰く、偉大すぎる原作に勝るとも劣らないだの、アニメは原作を超えただの。今日はそんな傑作アニメの話をさせてくれ。

『BANANA FISH』の魅力

この作品の一番の魅力って、なんと言っても「キャラクター」だ。特に描かれるのは、主人公であるアッシュと英二の関係性。

ニューヨークのギャング達のリーダーであるアッシュ・リンクスと、日本から取材に来ただけのひ弱な大学生である奥村英二。一見理解し合えそうにない両者の魂の触れ合いが、この作品の大きな主題だろう。ここでは「魂の触れ合い」という言葉を用いたが、これ以外に彼らの関係を言い表すのに適切な言葉が見つからない。恋慕ではないし、友情でもない、それよりももっと密接で、もっと切実な繋がりが、この二人の間にはある。

で、その繋がりを語る上で避けては通れないのが、当然第2話の英二の跳躍シーン。これがもう本当に魂が震える名アニメーションで、僕が今まで見て来た中でも1、2を争うくらい美しくてかっこいいシーンなのだ。

どうせ死ぬんだったら、なんだってやってやらぁ!

という英二のセリフには、彼の奥底の強さがしっかり現れていてシビれるし、英二がアッシュのパートナーたる人物である事を証明する、象徴的で重要なシーンだ。躍動感もコマ割りもこれ以上ないくらいの完成度で、あの数十秒のアニメーションにどれだけの心血を注いだかが透けて見える。原作を知らない僕らからすれば、第2話で早速あのシーンをお見舞いされ、あれよあれよという間に物語に引き込まれていく。思えば僕の心はあの時点で既に鷲掴みにされていた訳だ。

それから描かれる二人の過去。虐げられ続けて傷つき過ぎたアッシュと、それでも抗う事をやめない彼を支える英二。この二人の関係性はただただ”美しい”の一語に尽きる。

 

テンポの良さ

そしてもう一つ、このアニメをとんでもなく面白くしているのがそのテンポの良さ。思い出すのは『鋼の錬金術師』だ。

ご存知の通り、エルリック兄弟と錬金術を巡る物語を、10年もの時間をかけて描いた作品で、何がすごいってその緻密かつブレのないプロットだ。10年間、一切ブレる事なく初めから終わりまで描き切ったこの作品は、無駄や寄り道が一切なく、全27巻で1つの長編大作として圧倒的な完成度を誇る。1〜2巻での伏線が終盤できっちり回収される様など、読み返すたびに感動してしまう。

そしてこの『BANANA FISH』にも同じものを感じる訳なのだよ。少なくとも今日までで放送された全9話、無駄なシーンは1つとして存在しない。1話ごとに目まぐるしく展開していく物語と、スピーディーでありながらも原作のツボは完璧に押さえる脚本の妙。プロデューサーの瓜生恭子氏も、全19巻の原作を24話で描き切ると宣言している通り、そもそも無駄なシーンなど挟む余地は一切ない。物語の要点を原作者並みに理解し、原作との乖離を限りなく抑え、それでいてアニメーションの利点を活かしきる。ゴールが決まっている物語だからこそ、その過程で一切の妥協を許さない。そんな情熱が、このアニメからは伝わってくる。

 

『BANANA FISH』を見逃すな

決して優しいストーリーではない。登場人物は平気で死んでいくし、アッシュの幼少時代なんて思わず目を背けたくなるほどにおぞましい。けれどもそうやって傷ついた人間が、愛に触れて何度でも立ち上がる姿は殊更に美しい。全24話中現在第9話、まだ追い付ける、今追い付こう。

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