文句なしのオールタイムベスト、湯浅政明『四畳半神話大系』

文句なしのオールタイムベスト、湯浅政明『四畳半神話大系』

なるほど、ピカピカの大学一回生の折、新歓期に僕の目の前に差し出された無数のビラ達は、僕の命運を決める幾万通りの未来への切符であったか。

誰しもの青春時代に標準装備されている「もしあの時こうしていれば」という無数の後悔を、パラレルワールドという手法をもって描き切ったこの作品。パラレルワールド(並行世界)・世界線といった主題は、『魔法少女まどかマギカ』『Steins;Gate』といったテン年代カルチャーを代表する作品中にも度々使われてきたものだが、そういった作品の頂点にあるのは、この湯浅政明『四畳半神話大系』であろう。なんせ面白さがマッハだ(サイズの概念を超えて速さとなった事の意)

このマスターピース、未視聴者がいるのであれば今すぐNetflixを契約し、カステラ片手に夜を明かして全11話を一気に観てしまう事を強く推奨するぞ。








湯浅政明『四畳半神話大系』

さて、何から話したものか。なんせこのアニメ、そんじょそこらの作品と比べると優れている点があまりにも多すぎる。舞台設定、脚本、演出、アニメーション、音楽 etc…だがしかし、やはりこの作品を大傑作たらしめたのは何と言っても声優陣によるセリフ回しであろう。

とりわけ主人公を演じた浅沼晋太郎のセリフ量たるや、通常のアニメ3クール分近い文字数であったに違いない。

全編を通して主人公の主観のみで進んでいくこの物語。そしてナレーションとして放たれる彼の苦悩・後悔・懺悔の数々。ナイーヴで内省的でこの上なくヘタレな彼の思い悩み方たるや尋常の域にあらず。あのベラベラと立て板に水なセリフ回しは唯一無二。第一話を観終える頃にはあの会話劇が癖になっているのだからたまらない。

そして何より、あの息もつかせぬセリフ回しによって僕らはグイグイと物語に引き込まれ、湯浅政明の手によって魔都と化した京都の街並みで繰り広げられる極上のコメディへと没入していくのだ。

そしてあのグネグネとバースの狂ったアニメーションが持つ中毒性はあまりに危険で、『夜は短し歩けよ乙女』『DEVILMAN crybaby』といった湯浅作品に共通のドラッギーさが、全作中で最大量配合されているのがこの『四畳半神話大系』だ。あの映像を見ていると脳が喜んでいるのが分かるし、実に捻くれた主人公の目を通して眺める京都の街並みはきっとあのアニメーションのようにウネウネと曲がりくねり、毒々しい色彩を放っているのだろうな。

さてこの物語、各話で主人公が選ぶサークルが変わっていく。第1話ではテニスサークル、第2話では映画、第3話サイクリングと、主人公の後悔の度に世界線は移動し、その度に彼の苦悩の幅は拡がっていく。されど幾つの世界線をまたごうとも決して千切れぬ小津と主人公の仲を結ぶ運命の黒い糸よ。

僕はこの小津という男がたまらなく好きだ。曰く「他人の不幸をおかずにして飯が食える男」、曰く「黒いキューピッド」、曰く「寂しがり屋さん」。キャラデザは面妖そのもの。スタイル性格歯並び、どれを取ってもおよそ人間らしからぬ男なのだが、作中のどの世界線においても彼は主人公の傍らに現れ、彼と出会うことで主人公の大学生活はより一層鬱屈していく。

最早小津と出会わない事こそが、最高の大学生活を送る最短距離であるように思えるのだが、それは断じて違う。何故なら、大学時代のありとあらゆる楽しかった事って、この作中で主人公と小津(時に師匠と城ヶ崎)が繰り広げたような、実にくだらない出来事だからだ。あの究極に無意味で時間の浪費としか取れぬような行動、その中にこそ僕らの大学生性は存在し、それこそが大学生を大学生たらしめる最大の要因ではなかったか。事実、最終章では小津と出会わない世界線が描かれるのだが、その世界の実に淡白でモノクロな事よ。

結局大学生活を楽しく彩るのは共に馬鹿な遊びに興じる友人であり、乱痴気騒ぎであり、無意味な時間の浪費そのものだ。つまるところ、この物語をより一層彩り、極上のコメディたらしめているのは間違いなくこの小津という男なのだ。悪役であり、親友であり、最早ヒロインの様ですらある。憎らしいのに全く憎めない。アニメ史上稀に見る最高のキャラクター、それが小津だ。

嗚呼、語るべき点は無数にあれど既に字数は2000字を超えようとしている。11話かけて張り巡らせる伏線の数々、それを完璧なメッセージを持たせて回収する脚本の妙、毒々しくも華々しい京都の街並みの事、闇鍋、猫ラーメン、占い屋の老婆etc…語るべき事は無数にあれど、これ以上はこの作品を観ていない方にとってはただの鬱陶しい説法に過ぎない。

とにかくこの作品は僕が見てきた数多のアニメ作品の中でも間違いなくオールタイムベスト。事あるごとに観返したい最高のアニメ作品であるが故に、この文章を読み、少しでも興味を唆られたそこの貴方は今すぐNetflixをつけるがよろしい。おっと、カステラを忘れぬよう。

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