止まらない時間と加速していく物語。近藤聡乃『A子さんの恋人』の5巻がたまらない!!

いやはや参った。クライマックスに向けて動き出した『A子さんの恋人』の5巻が面白い、面白すぎる。天才的な手腕でもって描かれるアラサー女子たちの恋愛模様もいよいよ佳境。復縁、交際、帰国、結婚etc…実に生々しい彼女らの恋愛模様も、近藤聡乃の手にかかればウィットとユーモアと学びに富んだ極上のコメディとなる。

そして何よりあのラストシーンで完璧に火がついてしまった。あの続きが気になって仕方がない。恐らく6巻、遅くとも7巻で完結を迎えるであろうこの作品のラストが気になって気になって仕方がないのだ!

ここまできたら僕らに出来ることなど何一つ無い。ただただ座して、二人の恋人の間で揺れ動くA子の恋路を見守るのだ!(語気・鼻息共に荒め)








近藤聡乃『A子さんの恋人』・5巻

物語は動き始めた。

これまでの『A子さんの恋人』といえば、停滞の物語だった。二人の恋人の間で揺れ動きながら決断を先延ばしにし続けるA子、ふらふらと気ままに暮らしながら誰のものにもならないA太郎、決して振り向かないA太郎の事を想い続けるI子。ぐるぐると永遠回り続ける山手線のような彼らの日常。友達と恋人、恋人と結婚との間でゆらゆらと、否、グダグダと決着を拒み続けるアラサー達。その本質は何と言っても「停滞」であった。

ところがこの5巻である。交際、結婚、仕事、住居、過去作。彼らを取り巻くありとあらゆるものが同時多発的に目まぐるしく変化するではないか。自ら変化を選んだU子もいれば、変化する事を余儀なくされたA太郎もいる。

物語の鍵を握るA子のデビュー作は、劇中劇としてその全容が明らかになるし、サッカーボールの様に転々と居場所を変え続けた金魚は遂にA子の元に転がり込む。これまで描かれ、仕込まれてきたありとあらゆる伏線が今、その役割を全うせんと続々とうごめきだし、1ヶ月のタイムリミットへと向けて加速していく。そう思えば停滞として描かれていたどのエピソードにも一切の無駄は無く、全てがこのクライマックスに向けて配置された完璧なパズルの様な作品だ。

しかし何度読み返しても近藤聡乃の圧倒的な脚本力には唸らされる。発言、モチーフ、時系列、メタファー、あらゆるテクニックを駆使して描くアラサー恋愛模様がこんなにも魅力的で極上のコメディになろうとは。後半になるにつれてシリアスなシーンが増えていき、ナレーションにも熱がこもる。5巻の最後の一文が放つ圧倒的な熱量には思わずシビれてしまったし、あの引き方はもはや悪魔的だ。A君、僕は貴方になりたい(ちなみに僕はA君と誕生日が一緒だ。嬉しい。)

遂に決着が近づいてきた平成を代表する恋愛文学『A子さんの恋人』。この結末はきっと全TV関係者が固唾を飲んで見守っていて、完結したと同時にキー局によるドラマ化企画争奪戦が始まるに違いない。そしてプロットの鬼・近藤聡乃のことだ、A君・A太郎のどちらを選んでも間違いなく最高の結末を用意しているに違いない。

次巻の発売は恐らくまた1年近く後のこと。向こう1年は既刊5巻までをじっくりと読み返しながら日々を過ごそう。果報は寝て待つのだ。

 

今すぐ『A子さんの恋人』を読むのだ

しかし、結局強いのは山田やヒロ君の様な誠実でいいヤツらなのだ。特に凡庸な善人として描かれ続けたヒロ君の恋愛観には、A子もK子も、そして当然僕も特大の鱗を落としたものだ。いい大人の恋愛を、きちんとそういった形で描く近藤聡乃の正しさにはぐうの音も出ないな。それでも僕はいい大人ではない彼らが大好きではあるのだが。

あと、完結した暁には、是非とも実写ドラマ化は野木亜紀子氏にお願いしたい。

記事:近藤聡乃『A子さんの恋人』の練りこまれたプロットの凄まじさに唸る

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