『FUJI ROCK FESTIVAL』について

いいモノ

フジロックは今年で死ぬんじゃないだろうか。そんな事すら思わせる程に絢爛豪華なキャスティングである。

ちなみに僕などは『ラインナップがどうあれ何が何でもフジロックには行く』と心の底から決めている狂信者だ。ラインナップがどんなに豪華だろうがクソだろうが、7月の最終週には僕は苗場にいる。

そして恐らく、フジロッカーの中にはそんな輩が少なくない。第一弾アーティストの発表前に発売される早割チケットが速攻で売り切れるのは全てその狂信者達の仕業である。一度もフジロックに行った事の無い坊や達には理解できないだろうが、一度でもあの空間に足を踏み入れたが最後、あなたは身も心も全てフジロックに捧げるようになり、途端に僕らの仲間入りである。

それくらいにフジロックは素晴らしい。

今回はそんなフジロックに関して、この溢れんばかりの思いの丈を僕の渾身の言葉で綴ろうと思う。いわばフジロックへのラブレターだ。

フジロックとの出会い

初めてフジロックに行ったのが高三の時、それから毎年欠かさず全日程参加しているので今年で6年目のフジロックである。幸い僕が大学で所属していたバンドサークルはフジロックサークルであると言っても過言ではないほど狂信者が揃っていた。毎年テントをいくつも張って、20人ほどでフジロックを謳歌するのである。先輩は後輩にビールをおごり、夜が明けるまでクリスタルパレスで踊り、疲労困憊泥酔状態でテントに戻ったかと思えば、テントで迎える朝は地獄の釜もかくやという蒸し暑さで、どんなに眠かろうが8時には目が覚める。この文章を書いているだけで僕の心にはエモの津波が押し寄せ、フジロックへの憧憬に焼き尽くされそうである。

先述の通り、僕が初めてフジロックに行ったのは高三の時。後に出会うサークルの事などつゆ知らず、当時付き合いのあったNPOがブースを出すというので、その手伝いで交通費・チケット代支給、宿もテント泊ではなく苗場プリンス、飲食費も1日5000円手渡しという太っ腹な待遇で行ったのが、僕の初めてのフジロック参戦であった。一見凄まじい好条件のように思えるが、初参戦のフジロックで友達など一人もおらず、高校生の僕はお酒も飲まず、ホテルの部屋はアメリカから来ているお偉いさんのケビンと一緒で、上手くコミュニケーションが取れずに何となく気まずいしで心から楽しいとは言えない状況だった。

しかも当時の僕といえば邦楽が全てだと思い込み、自分の知っているアーティスト以外を聞こうともしない阿呆であった。『The Stone Roses』『Noel Gallagher’s High Flying Birds』『Radiohead』という洋楽ファン垂涎のヘッドライナー達に見向きもしない大うつけであった。とはいえ思い返してみれば『cero』に出会ったのもこの年のフジロックだし、『井上陽水』の少年時代を聞いて涙したのもこの年である。洋楽を聞かない小僧なりにフジロックを楽しんでいたのである。

だがやはり、この年一番の大ヒットはアルゼンチンから来た『ONDA VAGA』というバンドであろう。

 

『ONDA VAGA』

前夜祭含め4日間で9回もステージに立ったらしいこいつら。「オレタチ アルゼンチンカラ キタッ」と片言で自己紹介をする彼らの事など、当時の僕は知る由もないが、どこかのステージ(もうどこだったか覚えていない)の1曲目で完全にぶち抜かれた。熱狂的だった。情熱的だったし、圧倒的だった。客も演者も完全にお祭り騒ぎだった。いてもたってもいられず前線まで突っ走ったら、ONDA VAGAの前線は後ろで見るよりも更に熱狂的で、日本人も外人もなく、高校生の僕は一瞬でもみくちゃにされた。最高だった。ふと気付くとあのケビンがいた。ケビンももみくちゃになっていて、見たことないくらい汗だくでめちゃくちゃ楽しそうだった。あの気難しそうなケビンが破顔一笑踊り狂ってる。僕のフジロックが始まった。

彼らのステージは疑いようもなく最高で、今でも僕のフジロックの原風景である。そして最後に、ミスターフジロックこと忌野清志郎の『デイ・ドリーム・ビリーバー』のカバー、それもアルゼンチンから来た彼らが日本語でカバーしたのである。客も全員大声を張り上げて歌っていた。当然僕も歌った。メンバーは歌詞カードガン見してるし、観客が歌詞なんて覚えてる訳もないからめちゃくちゃ間違える、だが楽しかった。ライブを見てあんなに楽しかったのは初めてだった。

ONDA VAGAがいなかったら、今の僕はフジロック・フリークではなかったかもしれない。

 

フジロックとは

それから5年間、フジロックは行く度行く度新しい感動を与えてくれる。音楽ももちろんだけれども、フジロックの魅力はそれだけではなくて、自然と音楽に囲まれた非日常感や開放感がとにかく素晴らしい。代表の日高さんも「俺の夢は“お客さんがどのステージも観なかった”っていうもの」って公言してるし、事実僕も年々川でビールを飲みながら、ホワイトの音漏れを聞くだけの時間が増えている。バイキング・小峠も似たようなことを言っていた気がするな。

知っているアーティストを見るのはもちろん良いし、知らないアーティストのライブを見れるのも最高、青空の下で飲むビールはビールの一番美味しい飲み方だし、雨が降って冷えてきた時に飲む苗場食堂の豚汁はベスト豚汁エヴァーである。散々言葉を尽くしてきたが、結局僕が言いたいことは本当にたったの一つだけ、フジロックでビールを飲もうよということだけである。

 

フジロックで会おう

最後に、フジロックの最高さなんて挙げていったらキリがないけど、それでも思いつくものを羅列してみる。

  • 木曜日深夜に苗場に到着して、リストバンド交換所の前で先にテントを張っていてくれた奴らに「ありがとう!」って言いながら飲むビール、そしてもつ煮
  • 金曜日の朝、OBがサークルの20人くらいに奢ってくれたビールで乾杯する瞬間
  • 土曜日深夜のクリスタル・パレス
  • めちゃくちゃ楽しみだったアーティストのライブなのに寝ちゃった時(Greenにありがち)
  • ヘッドライナー裏で、超大御所アーティストを尻目に苗場食堂で飲むビール
  • ボードウォークの途中にあるテントのエロさ
  • MTTD(まいたけ天丼)
  • ヘヴンで食べる丸かじりの桃
  • ハイネケン
  • ハイネケンの空コップで作るハイネケンタワー
  • 入れ方が下手くそで半分くらい泡のハイネケン
  • 朝霧牛乳(朝霧牛乳!!)
  • 次に会う時はフジロックの友人と交わす「じゃ、苗場で」の挨拶

こうして僕が渾身の気持ちで奮った言葉でさえも、フジロックの魅力の二割程度しか伝えられていないように思う。残りの八割は是非苗場で、自分の目と耳で確かめて欲しい。

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