日々のこと、2021年9月4日

日々のこと

あまりにも涼しい日が続くものだから、この地球のフェイントにあえて騙されて扇風機を仕舞ってしまおうかと考えたが、来週の僕が後悔している姿がありありと目に浮かんだのでやっぱりやめた。僕はこうして思い立った時に行動を起こさないとずるずると長引かせてしまう節がある。去年は8月半ばまで扇風機を出さなかったかと思いきや、ついぞ仕舞ったのはクリスマス頃。大した手間でもないくせに、意外と心のパワーを使うのだよなあの作業は。

さて、まだ9月だというのに寒いし天気も悪い。室内乾燥設備の無い我が家は長雨にすこぶる弱い。おまけにまだ衣替えも済ませていない今、切れるカードが少なすぎて、手当たり次第に出してある長袖を着る日々だ。この一瞬の涼しさ、エアコンを付けずに眠れるのは良いが、気圧に虐められ布団に甘やかされ、毎朝の葛藤が長引いているのを如実に感じる。本格的な冬が来る前にモーニングルーティンをガッチガチに固め、寒い朝でも人間らしい暮らしができるように習慣を整備せねばな。

さて、2週間分の日々のことです。どうぞ。

日々のこと、2021年9月4日

25日水曜日、ネットで見かけた『Sonny Boy』というアニメが面白いという噂を頼りにNetflix。

脚本は『四畳半神話大系』の夏目真悟、キャラ原案は江口寿史、主題歌は銀杏Boyzというまさかの布陣。さらには劇中歌には落日飛車やミツメやザ・なつやすみバンド、VIDEOTAPEMUSIC、空中泥棒らが名を連ね、もうそんなの僕得でしかないこのアニメ、下馬評通りなかなか面白い。内容は異世界異能モノだが、漂流教室というテーマからは、僕ら世代は色々と思うところがある。銀杏の名曲然り楳図かずおの漫画然り。窪塚主演のドラマは幼い僕の柔らかな心に不気味な影を落とした作品だが、この作品にはそういった退廃的な気配はなく、美しい色彩も相まってどこかカラッとした印象を受ける。あと雰囲気が全体的に00年代エロゲっぽいのが僕としてはかなりツボ。未完の作品なので完結した際には感想でも綴ろうかな。

27日金曜日、Yin Yin『The Rabbit That Hunts Tigers』にどハマり。

ジャケから感じた圧倒的なチャイナ感がアルバム全体に横たわり、エキゾチックな気分で50分間が過ごせるこの名盤。近いところで言えばKhruangbinや、先日観たライブの坂本慎太郎あたりだろうか。ジャングルを進むような重たいベースの音色と要所でいい仕事をこなすパーカッション。その上でリバーブとコーラスの効いたギターが歌うように暴れ回る。蒸し暑く煌びやかなアジアの夜はこうあるべきだよなというトラックが14曲も続いて本当に最高なのだ。こういうアジア音楽の素晴らしさを僕に教えてくれたのはVIDEOTAPEMUSIC『世界各国の夜』だったか、それとも2012年フジロックで観たOnda Vagaだったか。何にせよこういう蒸し暑い音楽がめちゃくちゃ好きだ。調べるとYin Yinはオランダのバンドらしく、KEXPに動画も上がっている。メンバーの見た目が最高だし、ギターは長髪髭モジャでまさかのツインヘッド。そこにまたシビれた。こんな夜、戻ってこい。

28日土曜日、羊文学の新作EP『you love』がしんみりと沁みる。表題曲『マヨイガ』の素晴らしさは先週語った通りだが、その蓮沼執太フィルアレンジも素晴らしかったし、全体的に煌めく青空が広がるような清々しくポップな曲が揃っているのが嬉しい。その中で一曲、一際静かな『白河夜船』という曲があるのが印象的だ。吉本ばななは昔から大好きで、同名小説『白河夜船』ももちろん読んだ。ゆっくりと揺蕩う水面にゆったりと流れていく時間。次第に深まる眠りは僕を彼岸に誘うようでどこか恐ろしく、それでも彼女の心象風景の美しさに魅了されて読み終えたのをよく覚えている。細かい内容はほとんど覚えていないのに、白く、涼しく、柔らかい霧に包まれたようなあの読後感だけは今も僕の心にある。曲を聴いて、久々に読み返してみたいと思った。実家から持ってきているとは思うのだけれども、段ボールから出さずに仕舞ったままだ。

31日火曜日、一緒に会社をやっている幼馴染と高校三年間を相部屋で過ごした友人が、誕生日プレゼントにVERMICULARのフライパンをくれた。良さそうだとは思いつつその値段に手が出なかったモノだったので心の底から嬉しい。家に帰って早速もやしを炒めたのだが、これつはとんでもないモノを貰ってしまったかもしれない。とにかく水があっという間に飛んでいくので素材から水分が出ず、シャッキシャキのもやし炒めが簡単に作れてしまう。普段炒め物には中華鍋を愛用している僕だが、気合を入れて超強火の中華鍋で作ったもやし炒めよりも、このフライパンでササっと作ったものの方が美味しい。これに関しては火力手際云々というよりもフライパンの性能がすごい。僕は中華鍋が大好きなので心苦しいが、今後炒め物のメイン鍋の座はVERMICULARに譲るかもしれないな。

嬉しかった反面問題が一つ。このプレゼントをもらった僕の親友二人、誕生日が全く同じ9月28日なのだよな。しかも二人ともプレゼントを選ぶのがめちゃくちゃに難しい。今月の出費とプレゼント選びのことを考えると頭が痛い。

1日水曜日、マイメン松井が聴き始めたというので『空気階段の踊り場』を1から聴き始めた。最新話は#228。一話あたり30分なので全て聴き終わるのに114時間かかる計算だ。五年間に渡り続く彼らの初回放送はたどたどしくも、芸人として初のキャリアとなるラジオ番組を持てた喜びと、ラジオという媒体に対する気持ちが溢れるような素晴らしい回でグッときた。もぐらに至っては「家にある家電がラジオだけ」と宣うほどのラジオ好き。社会との唯一の接点だったというラジオは彼のコントにもチラホラと現れるし、「サラリーマンじゃない人の声」のコーナーでは、社会の受け皿からはみ出てしまいそうな人々の声を自ら拾い上げていく。彼ら自身がそうだからか、彼らのコントからはそういったはみ出しものへの眼差しを感じるし、その源流となる彼らの生い立ちや思想が、ラジオから透けてくるのが嬉しい。

それにしてもこれだけバックナンバーがあると安心するのは僕だけだろうか。Netflixで『美味しんぼ』を観ている時にも同じ安心感があった。僕は物語が終わってしまうのが悲しいタイプの人間なので、最終巻を買ったのに読んでない漫画がいくつかある。どんな物語にも終わりがあるとはわかっちゃいるが、終わったのに終わってない、みたいな作品が僕は好きだな。『それでも町は廻っている』とか『7SEEDS』とか。

タイトルとURLをコピーしました