日々のこと、2020年4月8日。浮羽市と遊牧民と古代コーカサスに寄せて

日々のこと

昨日、東京においても緊急事態宣言が発令されたわけだが、家に籠っている以上変わった事は何もない。コンビニはやってるし、メルカリで何か買えば発送もされる。聞くところによれば企業の状況もさして変わりはないというし、肩透かしを食らった気分だ。

しかしこのリモートワークというやつは仕事とプライベートの境界線を著しく曖昧にするよな。僕などは自分で会社を起した手前、元々公私混同がかなり進んだ生活をしていたけれども、それもこの2週間でさらに混ざり合った気がしてならない。24時間を食事か睡眠か仕事か読書に配分するだけの毎日だ。その話を友人にしたら「作家か」と。なるほど作家の暮らし、悪くない。

日々のこと、4月8日

「晴耕雨読」という言葉、あまりにも理想のライフスタイル過ぎやしませんか?晴れたら畑を耕し、雨が降ったら本を読む。まあ実際のところは雨の日だって畑に向かわなければならない日もあるのだけれども、それでもその「地球と暮らしてる感」に凄まじく憧れる。

先日、福岡県うきは市という町に行く機会があった。県の南東部に位置し、博多からは車で1時間程。栄えてるとはお世辞にも言えない長閑な町で、ぶどうや柿、梅といった果物の栽培が盛んらしい。先日はその山中でお茶を作っている生産者さんの元を尋ねた。

鹿児島、静岡、三重など、あちこちの農家さんに出入りをさせてもらっている僕だけれども、このうきは出張には過去一番の衝撃を受けた。人と環境が許すのであれば今すぐにでも移住したい。なんと言うかもう、まんまジブリ。トトロの世界なのだ。自然が豊かで、水が綺麗で、人が優しくて、ご飯が美味しい。湧き水百選にも数えられる清水があるそうで、ちょっと前まで各世帯に井戸が引かれていたと言うから驚きである。その中でも僕が感動したのが、棚田百選にも数えられるつづら棚田だ。

残念だから現在は放棄されて使われていない部分の方が多いらしいのだけれども、逆にこの寂れた感じがどうにも良い。人が過酷な自然を征服し、農作業のために切り開かれた山々が、再び人の手を離れ自然に回帰していく。その途中経過は人工物と自然とが丁度折り合いをつけた絶妙なバランスで、僕の心をこれでもかというほど打った。僕らが尋ねた農家さんは、この棚田を再利用してお茶を植えていた。

夏には蛍が舞い、秋口には彼岸花が一面に咲き誇る。冬は雪だって降るし、夏は川に入って遊んでも良い。そして極め付けは、この恵まれた環境が美食帝国・博多から1時間で手に入るという圧倒的アクセス。今の仕事が落ち着いたらこの農家さんの元で1年間くらい住み込みで働かせてもらいたいと、ちょっと本気で考えている。

少し前に古本屋で買っておいた森薫『乙嫁語り』の8・9巻を読む。そうだった、僕には「遊牧民」という夢もあるんだった。

羊を飼い、布を編み、刺繍をし、詩を誦じる。森薫が描く19世期の中央アジアの暮らしはあまりにも美しく、遊牧民として生まれてこなかった自分の運命を呪めしくも思う。今読んでいるジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』は、定住型社会と移住型社会の差異にも触れていて、曰く、移住型社会は近代的で複雑な社会体系を作るのが難しい。その結果として近代文明に破れ去った民族ではあるのだけれども、古くから続くスタイルを守り貫き、自然と共にあることを選ぶ遊牧民の暮らしにはものすごく憧れる。現存する遊牧民は、もはやモンゴルとツンドラにしかいないそうだから、選ぶとしたら圧倒的にモンゴルだ。僕砂漠好きだし。

少し前にこんなnoteを読んだ。

六本木のスラムで古代コーカサス人のように暮らそうとしたOLの話

めちゃくちゃ面白い。そして僕にはこの方の気持ちが驚くほどよくわかる。古代コーカサスに憧れる訳ではないのだけれども、原始的な生活に対する憧れがずっとあるのだ。『7SEEDS』『サバイバル』『自殺島』『Dr.Stone』etc… 読んだサバイバル漫画は数知れないし、いつかナイフ1本で無人島を1週間生き延びるやつをやりたいと思っている。何がそうまで僕を掻き立てるのか、正直自分でもわかっていないのだけれども、レベル上げに近い感覚なのだと思う。何もない土地で食材を集め、住処を作り、暮らしを発展させていく。そのプロセスにものすごく興味があるのだ。きっとそこで覚えることなんて、現代の暮らしには全く役に立たないだろうけど、これに関しては完全に趣味なので一向に構わない。無人島でも遊牧民でも田舎暮らしでも、きっと一定楽しめる素質が僕にはあると思うのだよな。

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