ホルモンが好きだ。
シマチョウの脂たっぷりのプリプリとした食感が好きだ。
浅めに焼いたレバーのとろける舌触りが好きだ。
ハツのサックリと嚙み切れるあの歯応えが好きだ。
あらゆる表情を見せてくれる、ありとあらゆるホルモンの部位が好きだ。
そして僕に最高のホルモンを食べさせてくれる『小野田商店』が、僕は大好きだ。
中目黒『小野田商店』
中目黒の駅を降りてすぐ、決して綺麗とは言えないこじんまりとした店構え。控えめな看板に店名が刻まれているのが、中目黒の名店『小野田商店』である。
店内にはカウンターが10席と、その奥に4人がけのテーブルが3つあるのみ。各席に置かれた七輪からはモクモクと煙が上がっており、店内には煙と焼けたホルモンの食欲をそそる香りで満ち満ちている。席数が限られていることもあり、予約はなかなか取れない。席は2時間制なので、遅い時間であれば比較的席は空いているものの、(確か)20時以降の席は当日の開店後でないと予約を取っておらず、若干ギャンブル要素のある予約方法となる。
そして予約に制限のある店に間違いはない。この店の予約を取れた方はその時点で安心してほしい。既に最高のホルモンは約束されているのだから。
超高コスパ
最強の一皿『ホルモン盛り合わせ』の話をする前に、この店の料金体系を説明せねばならない。
其れ即ち、1品500円。
ライスや上タン等の一部メニューを除けば、ドリンクもホルモンもキムチも全て1品500円。あまりの安さに驚嘆するレベルだがこれは大マジだ。レバーもマルチョウも豚トロもハラミも全て500円。一人前でも3〜4名で十分にシェアできるトーションだし、野菜もつまみも同様。一体どうやってこの単価を維持しているのか。
ちなみにこのお店では、そのあまりに高いコスパ維持のためか、予約時に1人当たり3000円以上使うことを約束しなければならない。つまり1人当たり6品。お酒を飲む人であれば3000円は決して高い壁ではないが、少食もしくはお酒を飲まない人は少し頑張らないと達成できない金額だ。
これで『小野田商店』が如何にコスパに優れた名店であることがお分りいただけただろうか。
ホルモン盛り合わせ(1人前1000円)
まずは見てほしい、このあまりの美しさに目も眩むようなホルモン達を。
どう考えてもホルモン界のベストナインだ。
鮮度に絶対の自信をもつこの店だからこそ、味付けはシンプルに塩胡椒のみ。その日に仕入れた肉をその日のうちに提供する最強スタイル。その鮮度は肉の輝きにしかと表れていて、もはや生でも食べられるんじゃないかと疑うような美しさだ。
この日のラインナップは、ツラミ(ほほ肉)・ハツ・おっぱい(乳腺)・マルチョウ・豚トロ・コリコリ(首の血管)・ギアラ(第4の腸)・あと2つなんか美味しいやつ。提供と同時に店員さんが丁寧に説明してくれるのだが、いかんせん全部は覚えきれない。刺し盛りとかも同じ現象起こるよね。
コリコリ・ふわふわ・サックリ・ジュワジュワ。部位によってあらゆる食感と味が楽しめるこの皿はさしづめ肉の遊園地。僕らは肉の奔流に押し流され、気が付いた瞬間にはこの9種のホルモンたちは僕らの胃の中に収まっている。その満足感たるやとんでもなく、少食な方はおそらくこれだけでも腹八分目まで来てしまうだろう。
そんな大満足の一皿が1人前1000円(写真は2人前)。コスパという言葉はこの店のためにある言葉だ。
レモンサワー
レモンサワーが美味い店に間違いはない。
『小野田商店』を名店たらしめる要因は、何も極上のホルモンだけではない。
レモン・焼酎・炭酸水。シンプルなお酒であればあるほど、作り手の実力が出るというもの。その点、この店のレモンサワーは間違いない。レモンの酸味と苦味、そして炭酸の爽快感は一発でホルモンの脂を洗い流してくれるし、モクモクと煙立ち込める店内に置いて、このレモンサワーだけはどこまでも透明で美しい。
氷も製氷機ではなくロックアイスが使われているし、作り手ももちろん一流。僕も学生時代はちょっといい居酒屋でお酒を作っていた身である。このレモンサワーの完成度と美しさには思わずうっとりとしてしまう。
シンプルな味付けのホルモンだからこそ、シンプルなレモンサワー。正直このレモンサワーであれば、どんな脂たっぷりのホルモンであっても無限に食べ続けられる。
右手にトング、左手にはレモンサワー。焼けたホルモンを熱々のまま頬張り、レモンサワーで喉を潤す。僕は『小野田商店』のホルモンが大好きだ。
『小野田商店』
東京都目黒区上目黒3-7-3 野尻ビル 1F
TEL:03-3760-6541