とんでもないカレーに出会っちまった・・・
僕は知っている。このカレーは「心の隙間につけこむカレー」だということ。
仕事終わり、家でご飯を作るには中途半端な時間に帰ってきた時。飲み会終わり、締めに何か食べて帰りたい時。休日の昼下がり、気怠く起きて小腹が空いている時。僕の心に少しでも隙があろうものならこのカレーはスルリと僕の心に入り込み、脳を支配し、気が付いた時には僕は『すぱいす暮らし』でカレーを食べている。
まさに悪魔的・・・ッ!悪魔的カレー・・・ッ!!!
完成されたポークカレー
まずはじっくり見てほしいこのポークカレーを。
女性の店主が一人で切り盛りしているらしいこのお店。カレーにも女性らしい繊細さと優しさが現れている。
ライスは長細いジャスミンライスの雑穀米。スパイス感の強いカレーにはやはり日本のモチモチとした米よりも、さらっと食べられる長細い米が良い。ルーはサラサラと、どちらかというとスープカレーのそれに近く、豚肉はホロホロとスプーンで崩せるほどによく煮込まれている。付け合わせの野菜はピクルスかと思いきやぬか漬けで、そのあっさりとした酸味がピリリと辛いカレーとよく合う最高の相棒だ。
しかしこのカレー、とんでもなく美味い。旨いというよりも美味いという言葉がよく合うカレーだ。
香りも味も、かなりハードにスパイスが使われていて、その重厚さ、深さがとんでもない。けれどもどれも尖った強さは持っておらず、繊細に丁寧に組み立てられたカレーだということがすぐにわかる。特に辛味は強すぎず、けれどもジワジワとしっかり身体を温める絶妙な辛さ。食べれば食べるほど汗が吹き出てきて、でもそのあまりの美味しさにスプーンを持つ手が止まらない。
そして僕が完全にやられたのが中央に添えられた細切りの生姜。
これほどストレートに生姜を添えるカレーを、僕は今まで見たことがなかったのだが、こいつがもう天才。
既に最高だと思っていたものが更にそれを超えてきた時、僕はこの上なく感動する。『BLUE GIANT』で川喜田の前で演奏した大、『魔法先生ネギま!』の27巻でラカンに見せたネギの魔法、Explosions in the Skyの『The Only Moment We Were Alone』の終盤の展開。そしてそこにスパイス暮らしのポークカレーが加わったのだ。
その生姜とカレーを一緒に食べた時、「これは革命だ」と思った。生姜の酸味と爽やかな清涼感は、この香りも味も一級品のカレーをもう一段上、特級品へと昇華させているのだ。恨むべくはカレーの質量に対して実に儚いその生姜のポーション。僕はどの1すくいにも生姜を1本、いや願わくば2本の生姜を食べたいと願ってしまう罪深き子。嗚呼、主よ、生姜の主よ。生姜をもっと。
ちなみに僕はカレーを食べてる時いっつも思うのが、カレーの持つ繊細なスパイスの美味しさって、どこか迷宮っぽいというか、自分の深層の精神に迫るような部分があると思っていて。カレーを食べる時の気分っていっつもReal Estate『In Mind』の気分だ。『スパイス暮らし』のカレーはそのスパイスの多層構造がとんでもないので、その深みにどんどん吸い込まれるような音楽と一緒に楽しむとトリップできそう。
しかしこの学芸大学という街、いいお店と飲兵衛がやたらと多い。
お店の方の筆頭は何と言っても同じく学芸大学にあるカレー屋の雄、『VOVO』だ。ベジタブルもチキンもビーフも全部絶品。すぱいす暮らしとはまた方向性の違うカレーで、この2つのカレーが同居する学芸大学という街に暮らせることを嬉しく思う。
→学芸大学『VOVO』のキュートな見た目で凶悪な辛さのビーフカレー
おわりに
ちなみにこのカレー屋、結構ガチガチな音楽かかってていい感じです。New Orderとかかかってて、カレーにこういう音楽を合わせるアプローチもあるのかって素直に勉強になります。
昼はカレーだけだが、夜はスパイスを活かした様々な料理があるらしく、飲みにも使えるらしい。なんとなく下北沢の『Moona』と店のスタンスが似ていて、そりゃあ僕が気に入るはずだと思った。
また行きたい、どころの騒ぎではない。絶対に通い詰める。