笹塚『天空のアジト マルシンスパ』は最高だぞ

タナカカツキ『サ道』を読んでからというもの、サウナがもたらす未知の快楽への好奇心は僕の胸中を満たし、来る日も来る日もサウナの事ばかり考えている。

僕が愛読しているヒコさんのブログ『青春ゾンビ』においても、サウナの快楽は度々話題にされており、僕のサウナへの欲求は道祖神の招きに逢ひて取るもの手につかなくなった松尾芭蕉をも凌ぐ勢いである。

もう辛抱ならぬ。2017年9月18日、そうして僕は意を決し足を踏み入れた。めくるめく快楽の坩堝、サウナの世界、サ道へと。

 

これ以降僕が書くサウナ関連記事は断じてサウナレビューなどではなく、サ道を歩む者としての修練と反省の日記である事をご了承いただきたい。

 




『マルシンスパ』の素晴らしさ

台風一過の祝日月曜。この日の予定は全くの皆無で、髪でも切ろうかと予約をすると15時からならとのこと。となればその前2〜3時間を使ってサウナに行こうではないか。

近所のサウナを虱潰しに調べあげ、ネットの口コミも加味しつつ、僕のサウナデビュー戦に相応しいサウナをディグったところ、自宅から徒歩30分弱、驚異の24時間営業、ネットでの口コミも上々という、些か出来すぎた環境のサウナが自宅から徒歩圏内にあることが判明、それが笹塚『天空のアジト マルシンスパ』である。

天空のアジトというだけあり、ビルの10階に位置するこのサウナ。ロビーからの眺めは以下の通りなかなかのもの。

しかも口コミを見るとサウナやリラックスチェアーからの眺めが素晴らしいとのこと。まだサウナのサの字も知らない僕ではあるが、街を見下ろしながらのサウナトランスに武者震いである。

 

ネットのクーポンを使って若干安く入場券を購入。中に入ると、手狭ながら中々清潔なロッカールームである。ちなみに受付のある10階にはロッカールームと食事スペースが、11階には浴場と休憩スペースがある。いずれも綺麗に整備されていて、休憩スペースにはWi-Fiも完備されているらしいので、次はそこで記事を書きたい。文字通り僕の熱が冷めてしまわぬ内に。

早々に衣服を脱ぎ散らかし、意気揚々と浴場へ。

  • 洗い場 ×4
  • シャワー ×1
  • リラックスチェア ×2
  • 大風呂(水風呂)
  • 小風呂(お湯)
  • サウナ
  • アカスリ台

という設備。普通の風呂よりも水風呂の方が大きいというのは、流石はサウナで有名な『マルシンスパ』といったところ。

逸る心を抑えながら身体を洗い、極上との呼び声の高いサウナへと向かった。

 

1セット目

サウナは小じんまりとしており、MAXで8人という小ぶりなキャパ。とはいえ入ってすぐに目につく、うず高く積まれたサウナストーンは見るからに本格的な仕様。事前の下調べによるとその設備は本場フィンランドのサウナを再現しているという。その脇にはセルフでロウリュウができるように桶と柄杓。そしてサウナから外が見られるよう設置されたガラス窓。これだけでもこのサウナがサウナー達に愛される理由が分かるというもの。

肝心の温度はというと95〜98度とカンカン。湿度も高すぎず低すぎず、サウナにびっしり並べられた岩塩や溶岩からの遠赤外線も合間って2〜3分で汗が吹き出してくる。時折入ってくる常連客らしき人がサウナストーンに水をかけるのだが、この直後は極度に熱された水蒸気が一瞬にして僕らの身体を包み込み、尋常ではない発汗が得られる。9分ほどで身体中に汗が滴り、頭がボウッとしてきたので退出。すぐさま汗を流して水風呂へ入る。

この日の水風呂は20度と若干ぬるめ。サ道を読む限りプロサウナー達は20度程度の水風呂ではのぼせてしまうとあったが、本日デビューのズブ初心者の僕、竦む心と縮こまる身体を押しきり、ハァハァ言いながら何とかして肩まで浸かる。(気を抜くとマジでハアァァとかフゥゥゥゥとか言ってる)しばらくすると自分が『温度の羽衣』を纏っているのを感じる。(身体の周りの水が火照った身体に温められ、絶妙な温度に保たれた極薄の膜のこと。『サ道』参照)この羽衣を纏った状態というのは冷たい水風呂の中であっても非常に心地良いのだが、恐らくこれでは身体は冷えず、理想のサウナトランスに達することはできない。心を鬼にして身体を動かし、絶えず発生する羽衣を霧散させる。

1分ほど入ったところで上がり、フラフラになりながらリラックスチェアへ。

数秒もすると心臓はバックバクと脈打ち、手足は芯は熱いのに表面は涼やか、目を閉じると頭の芯がグワングワンと湾曲しているのを感じ、全身から力が抜け、ジェル状になって溶け出していくようなあの感覚が襲ってくる。

あまりの気持ち良さに心は澄み渡り、サウナを作ったフィンランド人への感謝、初めてサウナトランスを得たフィンランド人への感謝、そしてその文化を心優しくも日本にもたらしてくれたフィンランド人への穏やかな感謝が心中に満ちていく。ふと目を開けると高層マンションの屋上にクレーン車。飽きることなく高さのみを追い求める人間の貪欲さに「愚かしいな」という気持ちが自然に起こっていた。

そんな恐るべきフワフワ極楽状態もしばらくするとどこかへ行ってしまう。本来『ととのう』とは、サウナ→水風呂→休憩の一連のルーティーンを3回ほど繰り返して得られるものとされている。1セットでこれなのだから3セット目にはどうなってしまうのだろうと胸を躍らせながら2セット目へ。

 

2セット目

1セット目はあんなに我慢して9分をやり過ごしたというのに、2セット目は9分では物足りず、1分追加し10分ほどで退出。まだ余裕はあったのだが今日はあくまでデビュー戦。あまり無理せず心地よく過ごすのも『サ道』の心得であろうと自分に言い訳をして水風呂に。1セット目と同じように1分ほど浸かる。

するとどうして、待てども待てどもあの心地良さが訪れない。心臓はバクバクと脈打っているものの、脳が溶け出していくようなあの感じが得られないのである。失敗したのだろうか。得られると思っていた快楽が得られない時の喪失感は尋常ではなく、僕の心が谷底に置き去りにされた赤子のようになったその時、僕の心に名著『サ道』のあのシーンが舞い降りた。

曰く、サウナ:水風呂:休憩のベストな比率は人の体質や体調によって千差万別。自らの黄金比は自らの試行錯誤(人体実験)の末にしか見つからないという。

2セット目に足りなかったものは一目瞭然、サウナでの「攻め」である。当然無理は禁物ではあるが、あの時の僕には確かに余裕があった。であれば重箱の隅を突き最後の一滴まで舐め取るような、そんな執拗なまでの攻め、自らに対する攻めの姿勢が足りなかったのである。

僕、猛省。だが得られたものは大きい。自身の成長を手に取るように感じつつ、決意の3セット目へ。

 

3セット目

攻め切る。最後数分は貸切状態だったのでセルフロウリュウをし、タオルでサウナ内の空気を撹拌。ムンムンの水蒸気が僕の肌を焼き、全身の汗腺からこれでもかというほどの発汗を確認したところで退出。汗を流して水風呂へ。人間の慣れというのは感心したもので、僕の身体は水風呂を前にしても縮こまらず、心はもはや意気揚々と水風呂へ向かうのである。身体を動かし、羽衣を常に散らしながら浸かる事1分、まだもう少しいけるのでは・・・?という確信めいた予感があったのでもう1分ほど浸かる。

そうして座ったリラックスチェア、僕の心は未知の快楽『ととのう』への期待と不安でゴッチャゴチャである。

数十秒もすると次第にあの波が近付いてきているのを感じる。来た・・・来た・・・来た来た来あーーーーーっ、あー、あ・・・?こんなもん・・・?

サウナトランスは訪れなかった。

どうして?

何が悪かったの?

水風呂は短期決戦がいいの?

数々の疑問が頭を過ぎるが、それよりも圧倒的に脳内を支配していたのは「悔しいっ!」と涙を噛み殺し漢泣きする僕の姿であった。

 

『マルシンスパ』に行こうよ

こうして記事を書きながら思うのは、僕はまだ長く果てないサウナの道の一歩目を踏み出したに過ぎないという事。そんな新参者が何の苦労もなく最上の快楽を得るなどというのは何とも虫のいい話である。

今回ととのえなかったと言っても、ととのえなかったという経験は得た。僕がすべき事はこの反省を生かし、次のサウナでの『ととのい』に思いを馳せる事である。

 

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