僕は決してUKのシーンに詳しいわけでも耳が早いわけでも無いのだが、ふと見つけたバンドが良いと嬉しくなる。ロンドン出身のガールズバンド『The Big Moon』、4/7にリリースされた彼女らのデビューアルバムがはちゃめちゃに良かったのでレビュー
The Big Moon『Love in the 4th Dimension』
海外のガールズバンドって挙げようとしてみても、不勉強な僕は『Warpaint』と『Savages』と『Summer Twins』くらいしか思いつかない。ひょっとしてそもそもがニッチなジャンルで絶対数が少ないのではと思いググるも、ものすごい数のガールズバンドがヒットしたので僕の勉強不足で間違いない。というのも僕はそもそもUS・UKのガールズバンドがあんまり好きじゃない。出会ってきたガールズバンドに好きなバンドがいなかったというのが正しい言い方かもしれないが、とにかくガールズバンドには過度の期待は持たないタイプである。
が『Cupid』、お前は別だ。
もはや使い古された、いろいろなペンキぶちまけカラフル系の映像である。次第にペンキ以外の物が投げ込まれるようになり、粉やビーチボール、アフロが彼女たちとスクリーンとを汚していくのだが、そのカオスな雰囲気が実にこの楽曲とマッチしていていい。
この『The Big Moon』というバンドの特徴は、何と言ってもボーカルの声とコーラスワーク、そして展開の予想外なダイナミックさである。
まずはボーカルだが、何にしてもこのボーカル、でかい。女性にこんなことは言うものではないが、ギターが窮屈そうである。他のメンバーと頭一つ分は違うし、裕に170cmはあるんじゃないかというような巨体である。しかしそんな身長に反してアンニュイで哀愁すら漂う彼女の声が、雰囲気があってすごく良い。
そしてもう1つ心地良いのがコーラスワーク。こちらも別段複雑なことをしているわけではないのだが、なんというか実に丁度良いのである。全ての楽曲でかなりの割合でコーラスはあるのだが、練りすぎてお高く止まるようなことも無く、実にシンプルなコーラスワークで最も心地よいラインで曲を織りなしているから素晴らしい。そもそも編成もベードラギターにボーカルギター、あとはたまにシンセが入るだけのシンプルな編成。コーラスワークもミニマムが良い。
そして前述の『Cupid』においてまさに僕の心を射止めたのが、物憂げでブルージーなAメロを見事に裏切るそれ以降のダイナミックな展開である。サビの直前に4人が入ってくるとこはガレージだし、サビのコーラスワークは爽やかなポップスのそれであり、Cメロ→大サビの王道感も素晴らしい。楽曲の中で静寂と轟音の間を泳ぎ回るようなダイナミックな展開が聞いてて飽きない。何も新しいパターンではないし、全てのパートはそれぞれ何かしらのバンドに似ているんだけども、それが彼女ら『The Big Moon』という枠組みの中でコロコロと入れ替わり立ち替り鳴らされるのが実に心地よい裏切りなのである。
ボーナストラック4曲を含めた15曲、捨て曲無し、アルバムを通して彼女らのポテンシャルを楽しめるかなりの良作である。
おわりに
まだデビューアルバムが出たばかりだし、そのアルバムですら出てからまだ10日しか経っていない。なんとかしてボーカルの彼女の身長を調べたかったがどう調べても出てこなかった。その大きさは実際にライブで確かめたい。
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