「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、第4弾はNY出身のシューゲイザーバンド『The Pains of Being Pure at Heart』
その長すぎる名前のせいで記事のタイトルがアホみたいなことになってしまっているのだが、このセルフタイトルを冠した1stが珠玉の名盤なのだから仕方あるまい。
変わり続けるバンドの姿
このペインズというバンド、元々はGt.&Vo.のキップ・バーマンが幼馴染と一緒に結成したバンドなのだが、数回のメンバー変更を経て現在正式メンバーと言えるのはフロントマンのキップのみ。実質彼のソロプロジェクトのようなバンドになっている。
2007年の結成以来、昨年7月にリリースされた『The Echo of Pleasure』を含めて4枚のフルレングスをリリースしているペインズ。キップは昨年結婚し、子供も生まれたらしく、どこかのメディアの記事には「この4枚目で最後のアルバムになるかもしれないし、そういう覚悟で作った」と語ったキップの写真が載っていて、寂しくなると同時に次の来日公演は絶対に行かねば後悔するかもしれぬと覚悟を決め、1/21の渋谷WWWXでの公演を目撃しに行ったのだ。
2014年のフジロック以来2度目のライブ。その日は相変わらずサポートメンバー含め5人編成だったのだが、ドラムとキーボの女性が変わっていて、ベースとギターは以前と同じメンバー。セットリストも最新リリースから1stの楽曲まで、アレンジは多少変わってはいても、全てのアルバムを網羅するような配曲で、変わり続けるバンドの姿と変わり続けないそのサウンドと在り方みたいなものの対比を感じてしまって思わずグッときた。
そんなセットリストの中でも、やはり主軸となるのは1stの楽曲たちだ。
The Pains Of Being Pure At Heart
確かこの曲、コードが4つくらいしか出てこない。そんなシンプルな曲なのに、この曲を聞いた僕の心はどうしようもなく高鳴るのだ。ノイズのようなギター、男女ツインボーカル、キラキラしたあの10代の全てを詰め込んだような圧倒的な青春感、若さが故の全能感とか、とにかく僕の心を揺さぶる要素しかない。
I want everything with you
だなんて、10代以外が口にしようものなら実刑モノである。
特にこのギターソロの入り、これ以上のギターソロの入りなんてあるだろうか。唯一肩を並べるとしたら在日ファンク『京都』の京都アンドレスポンスからのギターソロの流れくらいである。ライブでもこのギターソロの入りのところで僕はぶち上がってしまった。
もちろん『Everything with You』だけではない。『Contender』『Come Saturday』『Young Adult Friction』『The Love is Fucking Right!』という珠玉の4曲が立て続けに繰り出される全10曲、その中には1曲足りとも捨て曲がない。そしてその全てに置いて青臭いほどの若さ、青春感がこのアルバムには溢れているのだから、青春ゾンビたる僕らには全くもって堪らない。
この素晴らしさを全て「初期衝動」という言葉で説明できるほど底の浅いアルバムではあるまいが、このアルバムの持つキラキラとした空気感や世界に名乗りを上げたような自信といい、やっぱりこの感じってファーストにしか宿らない特別なものな気がしてしまう。
僕は今でもこのアルバムを聞くと「やったるぜ」という気持ちになるし、どこか懐かしいような切ないような気持ちにさせてくれる。こんなアルバムは『The Pains Of Being Pure At Heart』の他に無い。
おわりに
ペインズ最高。キップは日本が大好きなのでまた来日してくれると信じている。
→Now Playing Vol.5 – 小春日和には純ポップスを。the chef cooks me『回転体』
←Now Playing Vol.3 – エモい気持ちになりたい時に。チャットモンチー『耳鳴り』