4人で魅せる現在とバンドの未来が詰まった最後の集大成 – 赤い公園『熱唱サマー』

赤い公園4枚目のアルバムであり、Vo.佐藤千明の脱退前最後の作品となったこの『熱唱サマー』

2017年最大の取りこぼしと言っても過言ではないこの傑作アルバム。聞いた時には思わず目頭が熱くなったものだが、とにかく、この作品をもって赤い公園というバンドがテン年代を代表するガールズバンドであると断定してしまいたい。ちなみに他には『チャットモンチー』『SHISHAMO』らが名を連ね、候補としては『CHAI』『Homecomings』などが挙げられる。

僕と赤い公園との出会いから、このアルバムのレビューまで、赤い公園を知る人も知らぬ人も全員読め。




『赤い公園』というバンド

ご存知だろうか、モーニング娘。’16のかの名曲『泡沫サタデーナイト』の作詞・作曲者が、赤い公園のGt.津野米咲だということを。SMAP『JOY!!』の作詞・作曲者も彼女であることを。その卓越したソングライティングはバンドサウンドで収まることを知らず、亀田誠治や蔦屋好位置らも期待を寄せる才媛である。

そんな才気溢れる作曲者擁する赤い公園というバンド。そもそも僕がこのバンドで初めて聞いたのは、前述のアイドルソングとはかけ離れた『塊』という曲である。

彼女らのステージ衣装である白装束に身を包み、神妙でダークな雰囲気を讃えつつ、サビや間奏で突然ブチ込まれる歪みに歪んだギターとのギャップ。恐ろしさとポップネスが同居したサビのパンチにも惹かれたし、そのコーラスラインの美しさにワンパンノックアウトであった。

そんな出会いを経た僕だが、いざリリースされたミニアルバム『透明なのか黒なのか/ランドリーで漂白を』を聞くと、今度はそのポップさに面食らった。『塊』で見せたダークな雰囲気を感じさせない、ガールズバンド然としたポップさに溢れた楽曲たち。彼女らの真髄はその振り幅の大きさなのだと思い知った。

思えば当時から津野のプロダクションの幅の広さは健在で、当然最新作『熱唱サマー』も赤い公園らしいアヴァンギャルドさとポップさ、ガーリーなラブソングから骨太なバンドサウンドまでが混在するアルバムとなっている。

 

『熱唱サマー』の真価

2010年の結成から、4人で走り続けてきた彼女達。Vo.佐藤千明の脱退による影響は、当然大きい。

173cmの長身から発せられるそのボーカルは、時にはガーリーで切ない恋心を歌い、また時には叫びにも似た力強い歌声ともなる。津野のソングライティング・表現の幅広さに応え得るボーカルは、正直なところ彼女以外考えられないのだが、彼女自身がそう感じたのであればそうなのだろう。

この作品が完成し、佐藤が脱退を表明した。赤い公園のヴォーカリストとして限界を感じたと言う。

そんな4人でのラストアルバムの幕開けは、その門出を祝うファンファーレのようにホーンがけたたましく鳴る『カメレオン』で飾られる。

ええい、もうこうなれば全曲レビューしてやる。時間がない奴は1、6、7、10、11、12だけ読め。

1.カメレオン

この曲がまたとんでもない良曲で、ホーンサウンドまでをも見事に赤い公園のポップソングとして落とし込み、湿っぽい気持ちなど一発で吹っ飛ばすようなとびっきりのサマー感とエネルギーが素晴らしい。正直この一曲だけで「赤い公園やったなおい!」と膝を叩く大名曲だ。

「どんなアルバムなんだろう?」とドキドキのマインドの時にこのどデカいパンチを食らうと、一気に彼女たちの世界観に惹きこまれて行くのを感じる。『熱唱サマー』と題されたアルバムの、これ以上なく最高のオープナーだ。

2.闇夜に提灯

サウンドはがっつりダンサブルでありながら、歌メロの歌い回しや歌詞に話のエッセンスが散りばめられていてそこのギャップがいい。お祭り感。

3.AUN

サビの途中で表拍と裏拍が入れ替わるという、赤い公園らしいトリッキーな曲。変な曲ではあるが歌メロはあくまでポップなラインを割らない。そのバランス感覚は流石だ。

4.最後の花

夏の終わり、花火、蜜のような想い。あくまで重たくダークに夏の恋の終わりを歌った曲。Vo.佐藤千明の声はこういう暗く重たい曲を歌わせても様になる。様になるのだが湿っぽくなったり嫌味ったらしくなったりしない。いい声だと思う本当に。

5.ジョーカー

トランプにおけるジョーカー。強くも弱くもなれて、その実誰にもなれない。ちょっと中二入ってる感じのテーマだけど、ここでも佐藤の声はカラッとしてて良い。

6.プラチナ

亀田誠治プロデュース。流石は亀田と言ったところか、赤い公園のポテンシャルをマックスまで引き出させるその手腕に脱帽。切なさと力強さと可憐さを一曲の中に詰め込めるだけ詰め込み、その要望に100%答え切った佐藤のボーカルがとにかくとんでもない。グッとくる良曲。

ここで鳴らされるサウンドは彼女たちの今の音だ。

7.恋と嘘

このアルバムのド本命ド真中。同じく亀田プロデュースなのだが『プラチナ』とは違い、今度はガーリーさに振り切ったプロデュース。

会いたい気持ちを抱えきれない小さな胸じゃ

男らしく焼けたあなたの隣似合わないから

とか

せっかく会えても見つめられない小さな目じゃ

まっすぐ夢見るあなたの隣似合わないから

とか。アイドルソング然とした切ない恋心をテーマに、とびっきりスイートなこの曲。このアルバムの振れ幅の女の子サイドの最大値がここ。こういう激甘ソングが大好きな僕にはもうたまらない。

8.セミロング

煮え切らない少女感が可愛らしいこの曲。とはいえかなりさっぱりとしたポップチューンで、大サビで

ほっときゃ良いのだ あいつのこった

とシレッと言ってのける津野の作詞センスたるや恐ろしいものがある。『恋と嘘』からこの流れがまた素晴らしい。

9.BEAR

ピアノ弾き語り。なんて事のない曲のはずなのだが、佐藤の声が優しく響く感じが良いので良い。

10.ほら

毎日ペダルを漕いだ 日差しの中も終わりね

あと2曲でバンドを去る佐藤が歌うこのフレーズにはグッとくると同時に寂しくなってしまう。

シンプルなバンドサウンドであるが故に津野の作曲センスの光るこの曲。彼女ら4人の想いを表したような歌詞と、直球勝負のバンドサウンドがかっこいい。赤い公園を初めて聞く人にも古参にも等しく良い曲だ。

11.Journey

死ぬまでヤングでいようぜBrother

『ほら』で1人違う道を歩むことを決め、別れを告げた佐藤はこうして3人にエールを送る。力強く、叫ぶように少し掠れたような佐藤の歌声はどこまでもかっこよくて、熱いメッセージとなって背中を押す。

この曲を聞くたびにがっつりエモくなってしまうのは僕だけではなかろう。

12.勇敢なこども

思えばアルバムを通して彼女たちは執拗に自分たちのことを「こども」だと歌い続けた。

こどもは無邪気に泥んこまみれで遊べ遊べ

-『カメレオン』

ずっと小さいこどものようにみんなはしゃいでいたいんだ

-『ほら』

素直になれなくて なんでもないようなふりして どこが大人だよ

-『Journey』

そんな彼女たちが一つの夏を経た後で自らを『勇敢なこども』と呼ぶ。アルバム終盤のこの流れは、赤い公園というバンドの一つの時代の締めくくりとして相応しいフィナーレだ。佐藤以外のメンバー3人の合唱から始まり、2番は佐藤だけ、そしてアウトロは全員の声が重なるという見え見えの演出もニクい。

4人で歩き続けた一つの旅を終えた彼女らがしばし眠りにつき、再び歩き出す時、一体何を思ってどんな音楽を鳴らすのか。佐藤が抜けた穴は決して小さくはないが、彼女たちはもうすでにその先を見つめている。そう感じさせてくれるこのアルバムが、僕は大好きだ。

 

赤い公園『熱唱サマー』に一言

切なくなって3000文字も書いてしまった。最高のアルバムだからみんな聞いてほしい。猫も杓子もね。

 

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