Now Playing Vol.7 – 休日のダラダラに最高の脱力系ラップを。Enjoy Music Club『FOREVER』

「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、第7弾は脱力系ラップグループ、EMCことEnjoy Music Clubの『FOREVER』

ヒップホップ全盛のこの時代に、ここまで僕らの日常に寄り添うヒップホップは後にも先にもこの一枚だけだろう。ユルさとダサさと情けなさが最高のケミストリーを起こし、一周回ってとにかく最高。

GWの最中、大した予定もなくただただダラダラ過ごす日々。やりきれない夜の、何かを待っている日々の、変えたい自分の、背中をほんの少しだけ押してくれる最高のアルバムの話をしよう。




Enjoy Music Club『FOREVER』

こたつとみかん、宅配ピザ、再放送のドラマ、本棚の漫画、うだるような暑さとエアコンの効いた部屋。

僕らを自宅に縛り付けるありとあらゆる事象を、EMCは肯定する。

給料日前で金無いし 『ゴリラーマン』まとめて読むか

それともあれあれあの映画、なんだっけ

『クールランニング』?

観ちゃうの?部屋出ないの?洗濯、散髪 on and on

– 『いいトゥモロー』

遠くに感じるあのクラブ

最高のラッパー 気になるDJ

いいね、だけど、なんだかなぁ

この空間に合ってない俺は

とかいっつも思っちゃうんだこれが

ぎこちない踊りで前で一人

正直行くか迷ってる今日も

あの娘は行ってるのかな

どうせ上手く喋れないしな

– 『エンジョイクラブソング』

早速の引用で恐縮なのだが、どうだろうこの溢れるナード感。スクールカースト低め、クラブとか行っても馴染めないし週末に予定なんか入ってない。多くの音楽好きがそうであるように、彼らも決して「イケてる」とは言い難い文化圏の人間なのだ。

そんな訳で僕らみたいな文化系の人間には、彼らのラップはあまりにも親和性が高い。それも正に今、GWでさしてすることもなく、ただただ部屋でグータラしているようなタイミングで聞こうものならどうにも胸にグッとクるものがある。

クラブだね 妥当な線として 

夏! クラブ! ナンパ! 思い出!

スチャダラパー – 『サマージャム’95』

スチャダラパイセンのこのライムには中々共感できない僕も、ナード感たっぷりEMCのラップには手放しで大共感だ。

強いていうならその人間味と日常感。オラつかない、ディスらない、酒は飲むけど強くない。腑抜けてるようで燻ってる。何かしたいけど今日はだるい。誰もが経験したことのある日常と感情が、これでもかというほど詰め込まれた脱力系宅録ヒップホップ。それがEMCの音楽だ。

 

ありすぎるパンチライン

このアルバム、とにかくパンチラインが多すぎる。全てを語っていては枚挙にいとまがないので、僕の独断でいくつか紹介しよう。

『ナイトランデブー』

柿ピーみたいになりたい

君が柿で僕がピー

そんな割合の会話がいい

ロングセラーのいいコンビ

こんなダっサい歌詞、EMC以外に一体誰が書けようか。

ところが、僕が使おうものなら一発でサイコパス認定されるようなサイコフレーズも、EMCの手にかかれば恋人たちの夜を彩る極上のグッドミュージックとなる。

切なさと愛おしさとたまらない夜。この曲で描かれる二人の恋人の関係性はこのフレーズに完璧に凝縮されていて、このフレーズのためにこの曲があると言っても過言ではない。

原曲にも参加している中川理沙がボーカルを務めるザ・なつやすみバンドとのコラボのライブ映像。MCシラフがラップしてるのが好きで何度も聴いている名Verだ。

 

『BIG LOVE』

光が照らす君のことを

ずっと見てたいけどこれで最後

例えるならば『プロポーズ大作戦』で、健三(山P)が礼(長澤まさみ)の結婚式を眺める気持ち。

結婚式の祝福ムードをこれでもかという程詰め込んだこの曲。酒を飲み、酔っ払い、昔話に花を咲かせる。イントロのオルガンからして最高にハッピーなサウンドと、悪ふざけのように底抜けに明るいラップ。そして剽軽なラップで二人の結婚を祝っていた彼の内心、してもしきれぬ後悔と行き場のない恋心。このフレーズが来るまでその心情をおくびにも出さない彼が、「ずっと見てたいけどこれで最後」だなんて最高に切ないじゃないか。

僕はこのフレーズを聞くたびに毎回余裕で目頭が熱くなる。

 

『エンジョイクラブソング』

もしも彼女になったらね

鱈・レバー食べて祝ってね

現実はタラレバで後悔だ

だからラップしてサンクラで公開だ!

いやダッサイ笑

鱈・レバー食べて祝ってね、ってなんだよ笑

と思ったその直後、彼らのラップに対する姿勢に一発で持ってかれる。

「現実は後悔ばかりだから、今、その後悔を俺らはラップに乗せてんだ」と言わんばかりのこのフレーズ。個人的にアルバム全体通してのパンチラインはここだと思っている。ここまで覇気らしい覇気も見せずにユルユルとラップかましてたEMCのバッチバチの本気。その情熱と「やっぱりモテたいんだ!」という納得。

ラッパーはモテるらしいからやる

んじゃなくてやりたいからやる

– 『EMCのラップ道』

だなんて言ってたけど、やっぱりモテたいのだ。男のモチベーションって基本そこだし、エネルギーとしての純度が最も高いのは結局”モテ”だ。

クラブは苦手だけど、あの娘といい感じになりたい。でも結局クラブではあの娘に話しかけられない。じゃあその惨めな気持ちいつラップにすんの?今でしょ。

 

EMC流エール

前述のパンチラインもそうだが、こいつらはグータラしつつもやる時はやる。最終的には家を出るし、苦手なクラブにだって行く。仕事しながら音楽やって、後悔しないためにラップする。

その姿勢に、どうにも僕は元気付けられるのだ。

何の予定もなくてダラダラしてた週末にこのアルバムを聴くと、「あいつ暇かな」なんて思って連絡してみたりする。どうにもブログを書く気にならない時にこのアルバムを聴くと、「俺は書きたいから書く」って思って無理にでも書き始めたりする。

EMCは「◯◯しろ」とか絶対言わない。けれども、グータラな僕を許しつつ、そんな背中をほんの少しだけ押してくれる。日常に寄り添う彼らのラップだからこそできる彼ら流のエールと共感とが、このアルバムには詰まっているのだ。

 

夏の夜更かしと翌日の寝過ごし

松本伊代『センチメンタルジャーニー』、Taylor Swift『We Are Never Ever Getting Back Together』などの誰もが知ってるポップチューンに、ザ・なつやすみバンドの中川理沙にHomecomings、思い出野郎Aチームといった、豪華ゲスト陣も加わっているこのアルバム。

夏らしさが増してきた今日この頃、グータラしながら自室で聴くEMC『FOREVER』は最高に響くはずだ。

さて、この記事は深夜のファミレスで書いているわけだが、明日も夜まで予定はない。夜更かしの翌日は昼過ぎまで寝るものと相場が決まっている。皆さんもそんな日があったならば、このリリックを思い出して夕方以降を最高にしようじゃないか。

ロンリーサマーナイトからの

寝過ごして昼になってるぜ

今日のメロディ的なヤツは俺のもんだベイベー

– 『いいトゥモロー』

 

Now Playing Vol.8 – 夏の入り口に激甘の渋谷系を。カジヒデキ『lolipop』

Now Playing Vo.6 – 雪降る街を歩きながら。住所不定無職『ジュリア!ジュリア!ジュリア!』

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