「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、第8弾は渋谷系最後の生き残り、カジヒデキの『lollipop』
御歳51(2008年のアルバムリリース時は41歳)にもなってこんなアメリカのカップケーキの様に甘い歌詞を歌えるものかと心の底から大尊敬ブチギメる唯一のアーティストといっても過言ではない。
三度の飯より渋谷系が大好きな僕である。そんな僕がオススメするこの季節とこのアルバム、是非ご賞味いただきたい。
カジヒデキ『lollipop』
ある種の人間が耳にすれば不快感すら覚える様な忌み言葉である「渋谷系」という業をその身に背負い、『Flipper’s Guitar』の強過ぎる影響を隠すこともなく渋谷系のど真ん中を歩み続けるカジヒデキ。
特筆すべきは何と言ってもその歌詞だ。
朝目が覚めるとキミがいて
チーズタルトを焼いてたさ
スイーツベイビー キミはそうさ
甘い甘い 僕の恋人
-『甘い恋人』
キミからのチューのおねだり
僕の予感通りだよ
その味はきっとラズベリー
さっき食べたケーキのしわざさ
-『ラズベリー・キッス』
胸焼け不可避。日本で一番甘い言葉を歌うのは西野カナでもEXILEでもない、カジヒデキである。
ここまで甘いと最早ふざけているのではないかと思うけれども、彼は努めて本気だ。キャンディー、ラズベリのケーキ、チーズタルト、ロリポップ。「お前はもう曲中で菓子を作るな」と心の中の千鳥ノブが嘆くほどに並べられる洋菓子(歌詞)の数々。聴くだけでお腹いっぱいだ。
ここでくれぐれも申し上げておきたいのは、『渋谷系』の音楽がどれもここまでゲロ甘ではないということ。Flipper’s Guitar、Cymbals、ORIGINAL LOVEといった偉大な先人たちにもこのエッセンスはあるものの、カジヒデキが突出して甘いというだけで、『渋谷系』が全てこうではないので安心して欲しい。
夏にカジヒデキ『lolipop』を聴く理由
さて、なぜ僕が夏にこのアルバムをオススメするのか。その理由はたった一つ、単純に夏以外だとちょっと甘過ぎるからだ。
春や秋の爽やかな気候にはちょっとそぐわないし、冬に背中を丸めながら聴く様な音楽でもない。こんな甘い歌詞、夏の到来に心が浮き立っている今この季節でないと、とても聴けたものではないのだ。
だがしかし、そんな激甘な歌詞もこの季節に限っては超極上のスイーツだ。
渋谷系ポップスの血を色濃く引き継いでいるだけあり、メロディラインのキャッチーさは相当なものだし、BPMも心地よい。エレクトロなご機嫌サウンドと、アコギやフルートといった渋谷系らしい楽器達は、夏へと向かう僕らの足取りを一気に軽くするし、気分を一段明るくしてくれる。
そして普段は「うへぇ」と身悶えしてしまう様な甘い歌詞であっても、このタイミングで聴くとたちまち「何だこの歌詞めっちゃええやん」と思えるから不思議だ。
まるでギンガムチェックみたいな二人
-『ラズベリー・キッス』
という歌詞には、渋谷系のありとあらゆる全てのエッセンスが詰まっているとすら思っている僕である。縦と横、白と黒、交わりつつも決して同じにはなれない二人。嗚呼、最っ高に渋谷系だ。この世界観に一度浸ってしまうと、そんじょそこらの恋の歌なんぞ、小指の先で弾いてしまえるようになるから是非一度試してみて欲しい。
要するにだ、このカロリー過多な音楽の美味しさを、余すことなく存分に味わうことができるのは唯一、夏の到来を目前に浮き足立っている今この季節だけなのだ。
カジヒデキ、聴こうよ
半分くらい悪口みたいになっちゃったけど、僕は心の底からカジヒデキが好きです。
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