トリプルファイヤーとOGRE YOUR ASSHOLEの2マンを観た

トリプルファイヤーとOGRE YOUR ASSHOLEの2マンを観た

クセとクセのぶつかり合いみたいな2マン。

急遽行けなくなった友人に変わってこのクセ強2マンを目撃してきましたのでライブレポ。



トリプルファイヤー

トリプルファイヤーのVo.吉田ほど面白い人間はそうそういない。

共感百景での大喜利でも、タモリ倶楽部でのトークでも、もちろんライブ中のMCでも。吉田が言葉を発するその瞬間、会場全体が並々ならぬ期待に満ちるのを感じる。そしていざ発せられる言葉はその期待値を超えてくるのだからとんでもない。あのタモリをして「絶対芸人やった方がいい」と言わしめる才人・吉田。だがこいつは芸人ではない、トリプルファイヤーが誇るフロントマンである。

音楽の話をしよう。

音楽ジャンルが無数に細分化され、様々な音楽の形が存在する今のシーンにおいて、トリプルファイヤー程ジャンル分けが難しいバンドもいない。リズムに縛られない自由なリリックはヒップホップだし、世界への不満を歌に乗せるそのスタイルはパンクだし、見方によってはブルースですらある。かといってサウンドはタイトなロックだしで、どのジャンルにも彼らの音楽を受け入れる受け皿が見付からない。世間的にはひとまず「インディーロック」がなんとか彼らを定義しているけれども、インディーって実に便利な言葉だ。

彼らの何が良いって、そのタイトな演奏と世界中のコンプレックスを一身に集めたような存在、吉田とのギャップだ。

1曲聞けばわかる通り、コミックバンドのようでありながら演奏のクオリティが半端ない。ドラムとベースのストイックなタイトさと、ある種リズム隊に近いフレーズを弾くギター。3つの楽器それぞれが全く異なる複雑なフレーズを弾きながら、1つのサウンドとして完璧にカッチリ合わせてくるその姿は「仕事人」という雰囲気があって渋みすら感じる。

この日のライブはそこにPrec.島田ボーイが加わった4人体制だったのだが、流石は島田ボーイ、バカかっこいいパーカスで、トリプルファイヤーのサウンドを1段上のレベルに引き上げていた。とはいえそれも、メンバー3人の演奏がしっかりタイトで、音楽としての土台が強固であるから成立することなのだ。

そしてそのかっちょいいサウンドとは対照的に、脱力感を隠そうともしない吉田のボーカルがこれまたクセになる。

世に存在する全てのコンプレックスをその身に受けたかのように、ありとあらゆる事象への不平不満を、劣等感を隠すことなくストレートに歌詞に乗せる。ひとえに不平不満といっても、尾崎豊のような不良っぽいやつではなく、スクールカーストの下位層の人間が抱く嫉みみたいなねちっこいやつ。『モテキ』の主人公フジくんをイメージしてもらうと手取り早い。

だらりとした佇まいで、恥も外聞もなく、情けなさすら漂わせながらの叫びは、ある種あるあるネタのような共感を呼ぶし、日常のそういった部分を切り取る感性の鋭さは目を見張るものがある。歌詞のフックという意味では、彼以上に世の中を皮肉れる人物はおるまい。そして吉田のようなどうしようもないくらいのダメ人間が、それを全く隠さず、むしろ個性として打ち出していってるのはいっそ清々しいし、言葉選びにもセンスがある。何よりそのダメ人間すぎるアティチュードからはある意味カリスマ性みたいなものも感じるのだ。

クールでタイトな演奏と、ダメ人間界のカリスマ。そのギャップが化学反応を起こし、病みつきになる。それがトリプルファイヤーというバンドだ。

ちなみにこの日のパンチラインは「スノボ行くやつ、バカ」という身も蓋もないフレーズでした。

 

OGRE YOUR ASSHOLE

オーガといえば思い出すのは去年のフジロック、引くくらいの豪雨の中での轟音のライブだ。あの鬼気迫るような迫力と凄みは、観客の五感を支配して、天候さえも味方につけた圧倒的なライブを見せつけた。

そしてこの日のライブ、僕はオーガが国内でもトップレベルのライブバンドだという確信を得た。今彼ら以上に音圧を自在に操るバンドって、国内にはいないんじゃないだろうか。そしてあそこまでライブの世界観が確立されているバンドも、今のシーンにはそういない。

自分が出した音を完璧に把握して、それが観客にどんな質感で届くのかを綿密に想像する。そこからグルーヴやバイブスみたいなライブ感を極限まで削ぎ落とし、再現性の高い音楽として確立された至高のライブサウンド。矛盾を孕んでいるようだが、一度ライブを観れば納得してもらえるだろう。一曲一曲の作り方もそうだし、ライブ全体の組み立て方を見ても、その裏側には物凄いストイックさや執念を感じる。計算され尽くしている感じ。

この日のライブの序盤は実に低温。バンドと会場の温度差をじわじわと埋めるように、ゆったりと温められていく空気。同じフレーズをひたすら繰り返すミニマルなベースとドラム、無機質で温度感の薄いボーカルとギター。やっぱりそこにグルーヴは無く、寧ろ機械的といった印象すら受ける。次第にギターの音圧が増していき、温度感を上げていく彼らの演奏に観客の期待も高まっていく。そして彼らの放つ轟音に会場が包まれた瞬間、何かが弾けたように空気が変わる。轟音×ダンサブル。音が鼓膜を支配し、脳を麻痺させる。周りを見ると我を忘れたように踊る観客。サイケな照明、揺れる会場。何と言ってもあの非日常感とトリップ感がたまらない。今日本でここまで没入感のあるライブができるバンドってないんじゃないだろうか。サウンドや嗜好は完全に海外のそれで、オーガが今のシーンでここまでの支持を得ている理由が良く分かった。

思ったのは、彼らのライブは洗練されていて、尚且つ完成されているということ。会場がどこであれ、観客が誰であれ、彼らは彼らの音楽を鳴らすだろう。その証拠に、このライブにアンコールは必要無いと感じた。実際アンコールはなかったし、あの1時間弱のステージはあの時点で完成されていて、それ以上の演奏は蛇足に感じるのだ。もっと言えば彼らが丁寧に培ったあの”熱”は一度下がってしまえば二度とは戻ってこないし、本編の最後にピークを持ってくるよう計算されたステージなのだから、アンコールはやはり蛇足にしかなり得ない。

アレンジは音源とライブで全く違うし、あの轟音が全身を包む感覚はライブでしか味わえないものなので、ライブ観た事ない方は是非一度目撃しておくことを強くオススメする。

 

おわりに

吉田がMCで「オーガと2マン、来るとこまで来たなという感じがあります」と笑いを取っていた。個人的には『Mac de Marco』の前座の方がすごいだろ、と思いました。

 

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