昨今のインディーシーンに横たわるシティポップ回帰の風潮はYogee New Waves『CLIMAX NIGHT』から始まったと言っても過言ではない。誰かが「ズッチーズッチーズッチードコドッドドン」とイントロのドラムのフレーズを口ずさもうものなら、すぐさま「パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ・パ〜パ」とギターのリフを口ずさむという遊びが流行ったりもした。今のインディーキッズは皆「コーラを飲み笑い合った日々」への憧憬を膨らませたものである。
そんなYogee New Wavesが送る2ndアルバム『WAVES』、ジメッとするであろうこれからの天気にぴったりの良アルバムだったのでご紹介。
感想
ボーカルの角館くんは大学が一緒だったこともあるし、いろいろな縁があって僕は実際に話したこともあるのだけれども、なんともカリスマのある魅力的な人で、あーいう人が今のシーンを引っ張って行っているというのはものすごく相応しいことのように思う。最近じゃあFacebookで記事やインタビューを見かける事もあるし、そういうのを見る度になんとなく他人の気がしないし、もっと言うと僕ら若者の言葉を代弁してくれているような感覚があってすごく嬉しくなるのだなぁ。
さて、今回のアルバムの話である。まず始めに、今までの楽曲と比べると全体的にポップ寄りな印象を受ける。特に歌詞はポップになり過ぎているきらいもあって、『CLIMAX NIGHT』とか『Good Bye』で若者の心を鷲掴みにしたフックのある歌詞は今作においてはあまり見られない。そこだけは残念な点だけれども、Yogeeの曲はやっぱり良い。
元々シングルカットされていた『Like Sixteen Candles』と『Fantasic Show』の2曲に関してはYogeeらしいグッドな曲であることは知っていたが、他の曲らも良い。特に3曲目『World is Mine』と4曲目『Dive into the Honeytime』の2曲に関しては、今までのYogeeのチルアウトな脱力系ポップスとは雰囲気の違う、いい意味で気の抜けたYogeeらしいロックンロールが体現されており、「俺こういうのも好きなんだ」っていうのに気付けるようなナイスなバイブスを持ったトラック。
特に『World is Mine』のサビのリードギターがめっちゃ好き。Yogeeのギターってリフでしかその存在感を発揮できていなかった印象があったけれども、ここのギターは聞いてて実に気持ちいいし、曲のローラーコースター感とあのピロピロリとしたトリルのフレーズが楽しい。ギターが抜けて新しく加入したメンバーが、良いサウンドを持ち込めているなって思える素直に良いフレーズ。
あとは『Dive into the Honeytime』においては、「魔法みたい」というフレーズを「Hold me tight」のように聞かせる最高の手法が用いられており、僕はこの手法が使われているだけでワクワクしてしまう病気にかかっているので当然この曲も大好きである。毛皮のマリーズ『ボニーとクライドは今夜も夢中』も同様の理由で僕は大好きである。
そして何より、8〜10曲目までの流れが最高である。シングルカットされていた『Like Sixteen Candles』に続いて『HOW DO YOU FEEL?』『SAYONARAMATA』と続くここの計3曲。特に8分弱と攻めの長尺に挑んだ『HOW DO YOU FEEL?』は今作においては特異点のような曲で、しっかり聴かせるサビの歌詞は過去の楽曲と比べても遜色のない素晴らしい出来。とにかくこの3曲はどんな天気の日でも、どんな気分の時にでも聞けて、一発でなんかサラッとした気分になれる最高の3曲である。
おわりに
やっぱりYogeeはいいなぁ。
でも『CLIMAX NIHGT』が一番大好きな僕は、どうしてもこれからのYogeeに大きく期待してしまう。