晴れてる日にも雨降りの日にも、健やかなる時も病める時も等しく聞ける音楽というのは実に少ない。イギリス・ウェールズのロックバンド『Los Campesinos!』は僕にとって、数少ないどんなシチュエーションでも聞ける音楽の一つである。楽曲が実に実直で馬鹿っぽくて何も考えずに聞けるというのが実にナイス。
2月に出た彼らの新譜、『Sick Scenes』もまた、シンプルで愚直でわかりやすく、どんな時でも聴きたくなるような良盤だったのでその話をしようじゃないか。
Los Campesinos!『Sick Scenes』
その語感からスペインとかラテン系の太陽の匂いがする系の言語だと予想できるが、このバンド名の心地良さったら無類である。事実「ロス キャンペシーノス」と発音した時、明らかに僕らのお口は喜んでいる。
調べてみるとバンド名にある「Los Campesinos」とは、スペイン語で「農民」という意味らしく、日本語に訳すと『農民!』となる。この半角ビックリマークが、バンドのポップさとひょうきんさに一味買っている事は疑いようがない。不勉強な僕はバンド名に半角ビックリマークが入ってるバンドは『GO!GO!7188』と『!!!』以外知らないが、どちらも最高のバンドであることはご存知の通りであり、当然この『Los Campesinos!』も例外ではない。
試しにWikipediaで検索してみるとこんな文章に出くわした。
ラモーンズ風に全員がキャンペシーノス!姓を名乗っている。
- ギャレス・キャンペシーノス! (Gareth Campesinos!)
- トム・キャンペシーノス! (Tom Campesinos!)
- ニール・キャンペシーノス! (Neil Campesinos!)
- キム・キャンペシーノス! (Kim Campesinos!)
- ロブ・’スパーキー・デスキャップ’・キャンペシーノス!(Rob ‘Sparky Deathcap’ Campesinos!)
- ジェイソン・キャンペシーノス!(Jason Campesinos!)
天下のWikipediaでこんなにもアホらしい文章が見られるなんて最高である。ラモーンズを引き合いに出しちゃうあたりも編集者の技量が生半可ではないことを容易に想像させるし、「キャンペシーノス!姓」という言葉の汎用性の低さが実にナイスだ。
そんな彼らの6枚目のアルバムである『Sick Scenes』、素直に訳すなら「気を病むような状況」となるが果たしてどういう意味なのか。イギリスで気を病むような状況というとどうしてもEU離脱がちらつくのだが、果たしてその様な国際情勢の影が彼らのアルバムから感じられるかというと、答えは断固として否である。彼らの持ち味である底抜けにハッピーな楽曲は健在だし、相変わらず歌詞とか曲名とかからも政治的・思想的な背景は全く感じられない。
そんなこんなで記事を書いていたら、見事にぴったりのタイミングでアルバムの1曲目である『Renato Dall’Ara』のPVが公開されていた(!)僕で再生回数が500と少しなのでかなり早く見つけた方であろう。この曲がまた気持ちのいい疾走感と、メンバー全員でコーラスをするというアンセム感を見事に兼ね備えた最高のリードトラックである。
このPVはどうやらツアー中に撮影した動画を切って貼って作った様な、実にお粗末な出来ではあるが、だたっ広いアメリカの荒野を車から撮影した映像の疾走感は楽曲とぴったりだし、そもそもロスキャンに凝ったPVは必要ないだろう。一度ライブに行ってみたいものである。
Los Campesinos!って良い。
ロスキャンはいつ聞いても元気になれるし、仕事中に聞いててもあんまり邪魔をしてこないから大好きである。Hostess所属だし、いつかHCWで来日してくれると信じております。
ロスキャンと似た感じのバカさを誇るアーティストを先日発見しましたので、ご共有まで。