SpotifyやApple Musicが登場した頃、僕は未来の音楽シーンにとにかくワクワクしていた。
CDを買ったりレンタルする事でしか手に入らなかった音楽。海を渡り、何万キロもの距離を越えて手に入る音楽。最早国内では手に入れる事の叶わない音楽だって存在する。
そんな世界中のありとあらゆるジャンルの音楽にいとも簡単にアクセスできて、しかも月々たったの1,000円で何十枚も、何百枚だって聴けてしまう。アルバム1枚をレコ屋で買うよりも遥かにお得にお手軽に、無限の音楽に触れることができる。
そしてその環境で、ありとあらゆる世界中の音楽を雑多に吸収しながら育った才能は、一体どんな音楽を作るのだろうか。
それを考えて、僕はとにかくワクワクしていた。
そしてその答えの1つは案外すぐに、それもあっさりと見付かる。
Momの『PLAYGROUND』は、どこまでも自由なアルバムだ。何というか、ルールが無い。
けれども、マナーはある。ポップ・ミュージックに連綿と受け継がれてきたマナーだ。
そのマナーってやつは色んな概念の寄せ集めに過ぎないのだけれども、都市の肌触りだったり、夏の夜の空気だったり、ボーイ・ミーツ・ガールだったり。そういう、ポップ・ミュージックに共通して存在する空気感みたいなヤツを、このアルバムも持っているのだ。
スカスカのサウンドも、まだまだ幼さを感じるボーカルも、どこか懐かしい電子音も、何処かで聴いたことのあるサンプリングミュージックも。「拙い」と言ってしまえばそれまでなのだけれども、これまで聴いてきたどんな音楽とも似ていなくて、とびっきりにスウィートで、ロマンチックで、そしてどこまでも愛おしい。
世界中の音楽が手のひらに集約する世界のその次に産まれる音楽。僕は何やらとんでもないミクスチャーみたいな音楽を想像していたのだけれども、それはどうやら違っていたみたいだ。少なくともMom『PLAYGROUND』はどこまでも自由で、そしてまだまだあどけない。
Mom『PLAYGROUND』は良いぞ
「クラフト・ヒップホップ」を自称し、作曲の全てをガレージバンドで完結させるというMom。半年程前に彼の音楽と出会ってからというもの、僕はずっとこの都会の夜のような感触のポップ・ミュージックに骨抜きだ。
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