たまたま仏像フリークの後輩がチケットを余らせているというので行ってきました。仏像の見方とか全然分かんないけど、詳しい人と行ったら色々解説してもらえそうだし、何より無料っていうのが大きいですよね。
正直言うと僕仏像なんて全く興味無かったし、もっと言うと『David Bowie展』以外で美術館とか展示見るのも初めてです。建築の良さもわからなければ、絵画なんてもっとわからない。とにかく音楽と文章と漫画以外の芸術が僕にはさっぱりわからんのです。
そんな芸術音痴な僕が、運慶の仏像は心から素晴らしいと思えたんですよね。
思わずため息が出るほど美しいと思えたんです。
相変わらず建築や絵画は分からないけど、仏像の素晴らしさは分かったんです。
11月26日までやっている『運慶』を一人でも多くの人に見てもらうべく、僕が素晴らしいと思った仏像ベスト5を発表します。
5位 重源
南都復興の功労者、重源の仏像。
首の突き出し方や老いて丸まった背中のラインはもとより、顔のシワや指の関節などの細部のリアルさが半端ではなく、本当に重源その人を目の前にしてるんでは無いかと錯覚できるレベルのリアリティは圧巻。
このなんとも言えない表情がなんとも言えなくて最高だし、こう、この仏像が持っている『救い』の力みたいなものがヒシヒシと伝わる像。ありがてぇ。
4位 大日如来坐像
運慶の処女作。僕らはこれを「ファースト」と呼んでいました。
写真では正面からの様子しかわからないのですが、横からみた時のぷっくりとした肩→腰→尻のラインが抜群に美しい。頬や胸部の柔らかさすら感じる造形は、仏教のぶの字も知らない僕ですら仏の尊さが感じ取れる美しさ。
そういった造形のラインの絶妙なバランスに対して着物や指、関節などの細部は、後の作品と比べると作り込まれているとは言えないのだが、その作風が初期衝動を感じさせて殊更に良い。
一番最初に展示されている仏像で、1周目が終わった後2周目に見た時、仏像眼が鍛えられた僕は10メートル以上離れたところからこの像を見た時、そのあまりの美しさに胸がいっぱいになって「やっぱりファーストが最高だな」って言いまくってました。
3位 世親・無著菩薩立像
僕は仏教のことは何も分からないのですが、仏像フリーク曰くめちゃくちゃえらいインドの坊さん。
この2体の像の素晴らしいのは何と言っても眼。彼らのこの眼には、感情以上の何かが宿っているとすら思わせるような、魔眼とでも呼ぶような神秘的な印象を受けました。特に無著はライティングが完璧で、その瞳が潤んでいるかのように輝いていたのが忘れられません。
展示室のある特定のポイントに立ってみると、まるで彼ら2人に同時に見つめられているかと錯覚するようなポイントがあり、そこにいるだけで魂が洗われるかのように穏やかな気持ちになったのが印象的でした。
とにかく「ありがたみ」を感じる仏像で、昔の人々が仏像を信仰の対象にしていた理由が少しわかったような気がします。
2位 四天王立像から多聞天
仏像フリーク曰く「私が一番好きな多聞様」。僕も初見でその立ち姿の力強さ・エネルギーに思わず息を飲んだのがこの仏像。写真の一番右。
見ての通り左手を高く掲げ、その手に持つ塔(塔なのかこれは?)を力強く睨みつけるその造形は、明らかに恣意的なエネルギーの所在、ベクトルが見て取れます。大きさも優に2メートルを超え、展示されている仏像でも最も打点の高い展示でもありました。
この像からはとにかく力強さやエネルギー、俗っぽい言葉を使うならば”オラみ”がバッチバチに伝わってきて、初めて見た時はそのあまりの迫力に動けませんでした。
僕もこの多聞様のようにエネルギッシュな男になりたいという願いを込め、携帯の待ち受けに設定しました。
1位 毘沙門天立像
映えある第1位は毘沙門天様。
これがどうやら運慶のセカンドらしいのですが、この像に関してはとにかく、実物を見た時だけに現れるグルーヴみたいなものが凄すぎて写真では伝わらない気がします。国宝ってすげぇなって、この時初めて思いました。
全体的に丸みを帯びたフォルムといい、着物の結び目やたなびき方のラインといい、全てが人智を超えた美しさを有してして、近くで見ても遠くから見ても心を鷲掴みにされたような感覚がありました。
仏像フリークが教えてくれた、つり上がった左腰から後ろの着物が右下に流れるあのラインの美しさは、一生忘れることはないでしょう。
おわりに
思うに運慶の仏像って写実的で、細部に至るまで超リアルに描かれているんですが、多分リアルな本人達と比べてみるとどこか人間的ではない部分があって、それは実際に仏像とモデルを比べて見ないと分からないくらいの極僅かな差があると思うんです。
で、その差があの人智を超えた尊さ、美しさには必要で、運慶の仏像はそこのバランス感覚がとんでもなかったんだろうなって思います。
半分くらい仏像フリークの受け売りですが。