昨日、東京には夕立が来た。
弊社は新宿の摩天楼郡もかくやという高所にオフィスを構えており、窓からは東京中が一望できるのだが、夕立というのは肉眼でも明らかに見て取れるから面白い。会社の人と「今新宿だねー」とか話したりもする。
そうこうしてる内に雨雲は恵比寿エリアを通り過ぎ、僕はそそくさと爆速退社をキメる。エレベーターの中はモワッとしていて、ビルから一歩外に出ると、夕立が運んで来た土やら草やらの独特の匂いがして、この感じ夏っぽいなぁと思ったその瞬間である。
昨夜のランタンパレードをまだ引きずっている。1曲目に演奏された新曲がとんでもなくて新しく音源になる日を楽しみにしています。アンコールで演奏された「甲州街道はもう夏なのさ」を受けて今日から夏です。https://t.co/kSeN6I2NYQ
— 澤部渡 (@skirt_oh_skirt) 2017年6月5日
こんなツイートを見つけてしまったのである。
Lantern Paradeの『甲州街道はもう夏なのさ』といえば、毎年僕が一方的に選出している「真夏のサマー・チューン賞」の昨年の受賞曲である。ちなみにその前はSHISHAMO『君と夏フェス』、そのまた前はスピッツ『トビウオ』、その更に前はくるり『Natsuno』が受賞している。歴代受賞曲を見てもわかる通り、完璧に栄誉ある賞である。
とにかくこの曲を一度でも聞けばわかるのだが、サウンドをとっても歌詞をとっても日本音楽の美しさの結晶のような曲であり、こんなに綺麗で切ない曲を、少なくとも僕は知らないのである。
タイトルでは「もう夏」なんて言っておきながら、この曲が持つ雰囲気は夏の終わりの切なさに満ち満ちていて、アコギとピアノのシンプルなフレーズは、誰もが持っている夏への郷愁だとか憧憬を否応無しに掻き立てる。ましてや、今まさに夕立にやられて夏の足音を感じているというノスタルジックな瞬間にこの曲を聞いてしまったならば最後、心には夏が訪れてしまう。まさに「もう夏」だ。
極め付けはこの歌詞である。
潤すために 乾かしたかのような僕の喉が
できれば夜明けから 夜更けまでを
見届けたいのだけれど僕は
見届けたいのだけれど 僕は
こんな素敵な歌詞を書く人は、どれほど日本語を愛しているのか。詩として美しすぎる言葉が、この上なく綺麗なサウンドに乗っている。間違いない、日本音楽の到達点である。
最後に、この曲を聴いてしまったが最後、心に夏の終わりの切なさが訪れてしまうので聴く際は細心の注意を払うよう口を酸っぱくして警告したい。
夕立と聴く、甲州街道はもう夏なのさ
ちなみに、せっかくオフィスでは夕立をやり過ごしたというのに最寄り駅に着くまでにしっかり夕立をキャッチアップしてしまい、結局駅で10分近く立往生する羽目になった。詰めの甘さを反省する。