「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、記念すべき第10弾は正体不明のおっさん、Simon Iのセルフタイトル。
ググっても大した情報が出てこないし、アルバムもこのセルフタイトル1枚のみ。読み方もずっと「サイモン アイ」だと思ってたら「サイモン・ザ・ファースト」らしい。公式HPの作り、SpotifyとItunesとFacebookへのリンクがあるだけのシンプル設計でちょっとウケちゃうからみんな見てみて。
何はともあれ季節は夏。次あなたが青空に出くわした時は、是非ともこのアルバムを聴いてみて欲しい。折角夏に聴くのだからバカであればあるほど良いに決まってるのだから。
Simon I『Simon I』
まず聴いて欲しいのはアルバムの絶対的エース『Automatic』
ドカドカと粗暴なドラム、わかりやすくキラキラした鉄琴の音、スッカスカのギターの音色。ダサい点を挙げ始めれば枚挙に遑がない。
だが一発目、ただただ出音の一発を聴くだけで、この曲が夏の曲である事がわかる。
楽曲からダダ漏れな疾走感と爽快感、ジャケ写から伝わる青い空。この曲を聴いているとオンボロのアメリカ製のオープンカーで海岸線をドライブしている絵面がありありと思い浮かぶ。もちろんそんな経験ありやしないのだが、思い浮かぶものは仕方あるまい。何を隠そう、僕のハートをぶち抜いたのもこの曲だ。
そしてもう1つ、この曲の魅力はその展開だ。
僕の持論に「大サビでメンバー全員が歌う曲はエモい」というものがあるが、この曲はまさにそれ。
サビ、Aメロ、サビ、2Aメロ、静かなサビ、皆で歌う大サビ
こんなアホみたいな構成、滅多に見れたもんじゃない。だが、シンプルさは時に全てを凌駕する。というか夏の曲なんて、分かりやすければやすいほど良いに決まってる。大事なのは分かりやすさと疾走感。その点この曲は満点だ。
大サビは疾走感も音数もマックス。突如現れる女性の声や、更にはバックで聞こえる男性複数人のコーラス。お前らどこから来やがった?というツッコミは置いといて、このオーケストラ感満載の展開は、実にありきたりなのだが分かっていてもトキめいてしまう。ただでさえクリアな青空が、その彩度を増して広がる感じ。たまんないね。
さて、この曲の話ばかりしてきてしまったけれども安心して欲しい、他の曲もちゃんとバカっぽいから。
アルバムのオープナー『Face Cream』はタイトルからしておバカなのに超グッドメロディーの良曲だし、唯一ビデオクリップが存在するリード曲『Fleet Week』なんて曲はすげぇ良いのにPVがバカ。おじさんが立ったり座ったりしながら歌ってるだけで、これじゃただの椅子とおじさんの映像だ。一体どういうメッセージなんだろう。
ここまでけちょんけちょんにディスってしまったけれども、この1〜3曲目までの流れ、正直言って文句なしに最高だ。3曲ともシングルカットされてもおかしくないシンプルでわかりやすいけれども、ロックの王道からは綺麗に脱線していて、そのひねくれた在り方が逆にオルタナの正道を行っている。ロックとオルタナの境界線ってあまりにも曖昧だけれども、案外このひねくれ感がそれなのかもしれないなんて思ったり。
バカっぽくて、わかりやすくて、10曲入ってるのに30分弱で終わっちゃうくらいあっけらかんとしていて、気持ちいい。今日みたいに天気のいい日は、そういうアルバムが良いよね。
余談だけど、バカみたいなバンドで真っ先に思い出すのはいっつもLos Campesinos!です。
記事:Los Campesinos!『Sick Scenes』
→Now Playing Vol.9 – 夏、夕方と夜の隙間をエモで埋める。Into it. Over it.『PROPER』
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