「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、第9弾はアメリカのエモバンド、Into it. Over it.『PROPER』
こないだたくちゃそさん家行った時に棚漁ってたらInto it. Over it.『PROPER』のレコード出てきた時、サイコーだったな pic.twitter.com/rLVp5xsZQ8
— フジイコウタ/ピザ (@repezen0819) 2018年7月12日
先日たくちゃそ(@takchaso)さん家にカレーを作りに行った時、レコード棚を漁っていると出てくる出てくるお宝達。You Blew It!やらDinasour.JrやらLyrical Schoolやら、懐かしい面々と出くわしエモが溢れた瞬間に見つけてしまったのがこのアルバム。
このアルバムにまつわるストーリーと素晴らしさに関して、エモエモな文章を書き殴ろうと思う。
Into it. Over it.『PROPER』
大学時代、僕はバンドサークルに所属していた。
そのサークルがまた実に変わったサークルで、「オールジャンルバンドサークル」を自称していた弊サークルは、ロック・ポップス・ファンク・フュージョン・メタル・ビッグバンドetc…世界中のありとあらゆるジャンルの音楽を演奏する謎サークルであった。僕は3年生の頃にそのサークルで代表を務めていて、当時の僕の趣味(渋谷系・シティポップ系)を思う存分ひけらかしたものだから、サークルが全体的にそちら寄りになっていた気がする。
そんな中、弊サークルが仲良くしていたサークルがあった。
毎年存続が危ぶまれるレベルで人がおらず、酒を飲みだすと止まらない。けれども彼らの演奏は誰よりも音がデカくて、骨太で、かっこよかった。そんな彼らが好んで演奏していたのが、エモと呼ばれるジャンルの音楽だ。もはや時代遅れといっても差し支えない趣味嗜好を持った人間が十数人集まっていたあの集団は、ザ・大学生バンドマンといった出で立ちで、皆暇さえあればタバコを吸い、大体髪が長くて黒スキニーを履いていた。
当時渋谷系の音楽に脳内を支配されていた僕が、American Football、Fall Out Boy、Get up Kids、Built to Spillといったアーティストを聴くようになったのも、全て彼らがきっかけであった。Into it. Over it.もまた、そういったバンドの内の一つだ。
ある日、そのサークルの友人が僕の家に泊まりに来たことがあった。今でこそしょっちゅう飲んだり遊んだりして、年末年始なんて7日あれば5日は会っていたものの、当時はそこまで仲が良かった訳ではなく、今思えばあいつはただ夜を使い果たしたいだけだったのだと分かる。僕のラジオを聴いている人がいればおそらく彼のことを知っているだろう。そう、松井だ。
フジロックの話や、お互いが好きな曲を聴かせあったりして、この年のフジロックで見事僕のベストアクト賞をかっさらったExplosions in the Skyの『The Only Moment We Were Alone』を教えてくれたのもこいつだった。そしてInto it. Over it.の『PROPER』というアルバムの事を知ったのは、この夜だ。
1曲目『Embracing Facts』から度肝を抜かれた。
たった2分弱の中に、ありとあらゆる「かっこ良さ」が詰まっている。水中か浮かび上がるようにクリアになっていくドラムのフレーズ。その次の瞬間最高のメロが飛び込んでくる。ギターもベースもボーカルも、ヨーイドンで鳴らされるそのメロにはAメロもサビもない。展開は間奏と歌メロの2つのみ。たったそれだけの2分弱が、僕の脳をぶち抜くのには十二分だった。
圧倒的なグッドメロディ。これだけのシンガロングも納得のメロディセンスだ。もちろんこの曲だけではない、というか12曲入りのこのアルバムに捨て曲が一切ない。『Fortunate Friend』の泣きの雰囲気も最高だし、『Where Your Nights Often End』のラストの展開の切なさと高揚感もグッとくる。『Write it Right』のサビなんて歌い出すのを堪える方が難しいくらいの最高の歌メロだ。
そんなアルバムにまつわるあれこれが、先日たくちゃそさん宅でレコードを見付けた時にフラッシュバックして、思わずテンションがぶち上がってしまったのだ。
そして僕がオススメする、このアルバムを聴くベストなタイミングは「夏の夕暮れ時、少しだけ涼しくなった街を歩きながら」だ。なんなら僕はこのアルバムを聴くためだけに会社から歩いて帰ったりする。仕事やプライベートで心にモヤモヤが溜まった時、このアルバムを聴きながら夕暮れる街を歩いていると、どうにもエモさに心が浸ってしまって、家に着く頃には心の靄は綺麗さっぱり晴れている。
きっと夏だろうが冬だろうが、このアルバムは等しく響くだろうけれども、それでも僕は断然夏だな。だって夏が一番エモいし。
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