全シティボーイ待望のシャムキャッツの新譜である。結論から言えば期待を裏切らない最高のアルバムである。初夏の青空の下で聞いた日にはもう思わずドライブに行きたくなってしまう。
バンドやったり、コラム書いたり、レーベル立ち上げたり、EMCのMVに出たりと、フロントマンである夏目くんは僕らシティボーイの琴線をくすぐる事に余念がない。
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シャムキャッツの前作EPのレビューはこちら
感想
今作には、『AFTER HOURS』『TAKE CARE』の僕らを一発で悩殺するようなポップセンスや、『君の町にも雨はふるのかい?』に見られたバンド過渡期の不安定さはほとんど無くて、代わりにこのアルバムに詰め込まれたのは、溢れんばかりの優しさとまどろみの中にいるかのような温かさである。
前作『君の町(以下略)』を聴いた人であれば、ああ、こっち(デボネア・ドライブ方面)か、と気付くような方向にシャムキャッツは向かっているらしい。だが『デボネア・ドライブ』ほどサイケでボワボワしておらず、あの丸みというか柔らかさを十全に引き継いだような雰囲気である。
さて。昨日の昼間からずっと楽しみにしていたアルバムリリース、朝の通勤の時間を使って丸々聴き終える。
1曲目の『花草』から、あまりにも素晴らしいものだから思わず泣きそうになってしまった。 何と言ってもこの『花草』という曲からはスピッツの気配を感じる。イントロやサビに確実にスピッツのエッセンスが散りばめられているのだ。それも僕の一番好きなハチミツの頃のスピッツ。たまらん。そりゃ涙も出る。で、そのグッドミュージックに乗る歌詞は稀代のカルチャー男子・夏目知幸の作詞である。何も大したことはない。二人で屋上に登るという話を、ただただゆっくりと、景色と感情とを確かめるように歌うのである。美しいなぁと思わずにはいられない。
『Travel Agency』『Coyote』『Lemon』なども前述の通り、今までのシャムキャッツとは一味違った優しさとまろやかさをたたえた極上ポップスである。ふと気付いた時に耳に飛び込んでくる歌詞の1フレーズ1フレーズがシャムキャッツらしいゆる〜くデフォルメされた現実味を多分に含んでいてたまらないのだ。
そもそもこのアルバム自体が、1つの一貫した景色の元に作られたアルバムである。曲調や時には歌い手すらも変えながら、世界観が曲から曲へと手渡されるかのような、一つの世界の中に全11曲が存在するようなイメージ。
夏目くん曰く、レーベル立ち上げなどに伴い仕事関係然としたバンドメンバー間の関係をもう一度友達に、という意味で『Friends Again』というタイトルがついたこのアルバム。このエピソードを念頭に置いて聴くだけでも、今までとは違った響き方をするはずなので是非もう一度聞いてみて欲しい。
おわりに
やはりシャムキャッツは良いし、シティボーイたる僕には響いてたまらない。
シャムキャッツってライブがてきとーだし、ツアー行かなくてもいいかななんて思っていたけれども、今のシャムキャッツがどんなライブをするのか、ものすごく気になってしまったのでチケットを取りに奔走する。