Now Playing Vol.5 – 小春日和には純ポップスを。the chef cook me『回転体』

Now Playing Vol.5 – 小春日和には純ポップスを。the chef cook me『回転体』

「こういう時このアルバムくそ響くよ!」を提供するNow Playing、第5弾は2013年にリリースされた国産ポップスの金字塔、the chef cooks meの『回転体』

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤がプロデュースをしたことで一躍有名になった彼ら。もっと言うと2016年、国産ポップスの地平を切り開いた大傑作『新たなる解』のayU tokiOがギターで参加していたというのだから、このアルバムが名盤であることに疑いの余地はない。それ以降のリリースが無いのが寂しいところではあるが、何年経っても滲まないこのアルバムの素晴らしさを語らせてほしい。

ポップスのド本命、ayU tokiOが示した『新たなる解』と言う金字塔について



春めく世界

この冬はとにかく寒かった。

布団から出るにはとんでもない決意が必要だし、一度こたつに入ろうものなら瞬く間に眠りへと誘われた。外に出るときはムクムクに着込まねばならなかったし、少しでも出歩こうものなら100年の酔いも冷めるような寒さだった。

ところがそんな長い冬にも終わりは来るもので。三寒四温、招かれざる客である花粉と共に顔をのぞかせる春の気配には、日本中の人々がくしゃみ鼻水目のかゆみにまみれながらも歓喜したものだ。そして季節が変われば、聞く音楽も変わる。

毛皮のマリーズ『ティン・パン・アレイ』

くるり『魂のゆくえ』

キリンジ『3』

Lamp『東京ユウトピア通信』

Of Monsters and Men『My Head is an Animal』etc…。

僕の冬を毎年彩るアルバム達も、もうじきお役御免。ここからはカラフルな情景が魅力のポップスの季節だ。

ポップス大好き渋谷系の僕としては、春になると聴きたくなる音楽は無数にあるものの、今年一番に聞いたのがこのthe chef cooks me『回転体』だった。

 

『回転体』

このthe chef cooks meというバンド、Wikipediaを見ると結成は2003年とある。今年で結成15年目を迎えるにも関わらず、アルバムは3枚しかリリースしていない。そして売れたと言えるのも、最新作(2013年)である『回転体』のみ。残る2枚のアルバムは、正直なところ僕も聞いたことがない。僕がただ一つ断言できるのは、「この回転体というアルバムが極上のポップスアルバムだ」ということだけだ。

複雑なコード展開、躍動する曲の構成のダイナミクス、これでもかというほど織り込まれるストリングス、高らかに鳴る管楽器、人間というものの在り方全てを肯定するような歌詞、豊かに重なるコーラス、グッドメロディ。とにかく全てがポップスとしてど真ん中、大正解。全11曲47分、余すところなく最高だ。

特にオープナー『流転する世界』。ギターとボーカルだけでしっとりと始まったかと思えば、突然鳴り出すストリングスで、目の前の景色が突然大きく開かれたような感覚が素晴らしい。その人間賛歌的な歌詞とくるくると表情を変える曲調が、この後のアルバムの雰囲気を象徴しているようで、アルバムに対する期待値がグッと高まる。そしてその高いハードルも楽々超えてくるから、全くこのアルバムはたまらない。

リード曲の『適当な闇』は王道のポップチューンで、音数を詰め込みまくったキラキラとしたサウンド。そして「自分を脇役だと思っている貴方だって美しい人生を生きている」的な王道メッセージ。そんな定番ソングを非凡なメロディセンスとアレンジで「the chef cook meのポップチューン」へと昇華させている。人生をステージと例えるのが、どこか毛皮のマリーズ『ビューティフル』とも共鳴する部分があって大好きだ。

アジカン後藤や岩崎愛、HUSKING BEEの磯部正文らがゲストボーカルで参加する『環状線は僕らをのせて』は、今作で一番注目を集めたナンバーだろう。「回転」というアルバム全体通してのテーマにもバッチリハマっているし、他の曲と違って音数少なく、オリジナルメンバー3人だけで奏でられるサウンドがまた良い。客演が全員出演しているPVもグッドだし、個人的にはプロデュースしながら自分も参加しちゃうゴッチの姿勢好き。

そのほかにも、アルバムで最もポップなナンバー『パスカル・エレクトス』、収穫祭のような情景と人々への愛に溢れた『ゴールデン・ターゲット』、ayU tokiOが作詞を担当し、底抜けに気持ち良いサウンドとメロディの『四季に歌えば』などなど、それぞれがライブでは四番を打てるような極上のポップチューン揃い。それが次々と繰り出されるものだから、僕らの気分も底抜けに上がりっぱなしである。

アルバム内唯一のバラードである『うつくしいひと』の独白のような歌詞とメロディには中毒性があるし、『song of sick』のドカドカしたサウンドと音楽への愛を高らかに歌った歌詞は最高の一語に尽きる。

そしてこの最高のアルバムを締めくくるのは、メンバー全員の合唱で始まる『まちに』という曲。カントリー・フォークっぽい曲調としりとりのような言葉遊びが特徴の曲なのだが、その歌詞がきちんとこのアルバムを象徴していて大好きだから引用させてくれ。

数多のまちに 那由多の暮らし

揺蕩う時代に芽吹く言葉

(中略)

365日の律動 触れたものすべてに温度があり

36度前後の熱情 冷めるまで続くその営み

日々は記録

関わりあって回るまちに生きる

都市と暮らし、人々の営みこそがポップスであり、日々は続き、季節は巡る。その全てが美しく素晴らしい。近年のオザケンも歌う主題をthe chef cooks meは2013年の時点で歌っているのだ。

さて、もうthe chef cooks me『回転体』がいかに素晴らしいかを語る必要はないだろう。

 

小春日和に聞きたいポップス

前述のayU tokiOの『新たなる解』はテン年代のポップスとしてシーンを切り拓いた名盤。『回転体』では『四季に歌えば』で作詞を担当していて、歌詞みながらこの曲を聞くとその詩世界の素晴らしさと、Vo. シモリョーの音楽に対する姿勢みたいなものが伝わって最高。

ポップスのド本命、ayU tokiOが示した『新たなる解』と言う金字塔について

 

おわりに

調べてみたら先月に新曲が1曲公開されているらしく、この記事を書き終えたら聞いてみようと思ってます。

ああ、楽しみだ。

 

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