すっげぇ完成度。
東京藝大出身の4人組『King Gnu』。ちなみに読み方は『キング・ヌー』。ヌーは動物のヌーらしい。
昨今の日本のシーンに風穴を空けるべく彗星のごとく現れた彼ら。アルバムとしての緊張感と初期衝動がヒリヒリと伝わって来る彼らの1stの話をさせてくれ。
『King Gnu』というバンド
まずアルバムを聞いて、彼らのサウンドの完成度と感性の鋭さに唸らされる。
ファンク・ヒップホップの重厚なブラック・ビートを根底に、時にはサンプリングや過激なシンセサウンドを多用し、時にはオルタナ丸出しのハードなギターを、時には賛美歌のような洗練されたサウンドを高い完成度で繰り出してくる彼ら。しかしKing Gnuの真髄は何と言っても常田(Gt.Vo.)と井口(Key.Vo.)のツインボーカルだろう。低くてサグさを感じるヒップホップ寄りの常田の声と、スウィートで流麗な歌謡曲のような歌声の井口。正反対の両者を巧みに使い分け、時に共存させる手腕は見事という他ない。
ミックスもかなり特異で、とにかくボーカルを中心に据えられており、時には他の楽器の音を飲み込むほどにボーカル偏重。バスドラは特大の音量で楽曲に重さを、シンセベースを多用したベースラインは彼らのクールなスタイルに拍車をかけている。
昨今のポップス偏重の日本のインディー勢とは明らかに乖離しており、ルーツが読み取れないほどに様々な要素を取り込んだ彼らの音楽が「トーキョー・ニュー・ミクスチャースタイル」と称されるのも納得である。
各々の楽器の腕も相当なもので、サウンドには隙が無いし、ソロを取ろうものなら抜群に独創的でイカしたものが飛び出す。正直これはすげぇぞと思わざるを得ない。とんだ大型新人が現れたものである。
個人的にはストリーミングが主流となったこの時代、今の若い世代は世界中の音楽にアクセスが可能となり、様々な音楽を下地に全く新しいジャンルの音楽が生まれると思っていたのだが、僕の予想が正しいとして、『King Gnu』は間違いなくその先駆けと称されるバンドである。
クールで洒脱なスタイルの裏に野心や衝動をひしひしと感じる、実に1stらしい1stアルバムである。
『King Gnu』に一言
荒削りで初期衝動に溢れた1st。強いていうならちょっと歌詞がクサいのが鼻につくとこではあるけれども、確実に今後の動向が楽しみなバンドです。