隔たりが生む寂しさと温かさ。Homecomings『WHALE LIVING』

寂しさを湛えつつも、木漏れ日のような温かさが終始寄り添っていて、胸の奥の柔らかい部分をぎゅっと掴まれたような切なさがゆっくりと沁み渡っていく。そんな素敵なアルバムだと思う。

ほぼ全曲を日本語詞で作詞した、Homecomingsの3rdアルバム『WHALE LIVING』は彼女らの転換点とも言える重要なアルバムとなった。リリースから2週間が経った今日まで、文字通り擦り切れる程このアルバムを聴いた僕がこの作品を語ろうじゃないか。

ポイントは「隔たり」だ。








Homecomings『WHALE LIVING』

これまでのHomecomingsを知っている方であれば一聴してすぐに気が付く。「日本語!?」って。

彼女ら音楽の最大の個性だった、日本語的な発音の英語がなくなっている。無論発音が良くなった訳ではなく、日本語で歌うことを選んだという意味だ。

映画『リズと青い鳥』の主題歌となった『Songbirds』以外の曲は全て日本語詞。

思えば平賀さち枝との共作である『白い光の中に』『カントリーロード』などは全て日本語詞。そこで「Homecomings×日本語」の良さは証明済みだし、このアルバムにおいても、絶妙な温度感で響くVo.畳野の歌声と詞はバッチリはまっている。

さて、日本語詞ともなるとこれまで以上に楽曲の歌詞に耳がいく訳だけれども、このアルバムの中には色々な形の「隔たり」が描かれている。それは物理的、もしくは精神的な距離であったり、時間であったり、時には生と死だったりと様々だが、とにかくこのアルバムの中にはいくつもの「隔たり」が存在している。

遠くに離れた君との日々が

今日は晴れたかな そうだといいけど

『Hull Down』

離れすぎた日々に肘をついて

青くなっていく窓を眺めてた

『Parks』

君に輪っかが浮かんでたんだ

僕にはないからさ喋ってごまかしたんだ

『So Far』

『WHALE LIVING』=「クジラの住処」という架空の街を舞台に描かれるいくつもの別離と隔たり。その間を埋めるのは往往にして「手紙」、それに他ならない。

彼は彼女に手紙を書く

新しい街のこと

その街にまだ馴染めないこと

なんでもない日々を

『Parks』

ここでいう「手紙」はあくまでモチーフであり、曲によっては電話やメモや歌が代替したりする訳だが、要するに「言葉」と「想い」だろう。

常にどこかに寂しさが存在するこの世界において、言葉と想いだけが温かい。そしてその温度は「隔たり」があるからこそ生まれる。遠く離れた相手のことを想う時、その言葉と想いには温度が宿る。そんな優しい世界を、Homecomingsは紡ぎあげた。

この世界では寂しさと温もりは表裏一体に存在していて、歌と音とを通してそれが伝わってしまった時、その事がどうにも僕の胸を締め付けて仕方がない。アルバム全体に漂う切なさはギュッと僕の胸を締め付け、寄り添うような優しさがそれを慰める。油断していると思わず泣いてしまいそうになる。そんな特別なアルバムなのだこの作品は。

僕らは途端にわからなくなる

言葉が魔法をなくす

(中略)

秘密が言葉を漏らしたなら

散らばった文字が浮かびだした

『Blue Hour』

Homecomingsは手紙に想いを託し、街を、人を救っていく。手紙と言ったら坂元裕二だし、言葉と魔法と言えば小沢健二だ。次代のポップカルチャーの担い手として、Homecomingsが名乗りをあげた。

名言だらけの名作ドラマ、坂元裕二『いつ恋』を観て

小沢健二『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』に寄せて

これまでのHomecomingsも、もしかするとそうだったのかもしれない。けれども手紙は届いてなんぼ、想いは伝わってなんぼだ。坂元裕二作品においては、何をおいても最終的に手紙は届くし、想いは伝わる。Homecomingsが手にした日本語という武器が、手紙を僕らに届けたのだろうな。

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