第4回 饅頭インダハウス

和菓子女子であり、同い年のブログ仲間でもあるせせさん(@nao_anko)とリレー形式で更新している、和菓子とカルチャーが互いにぶつかり合い、互いが互いを高め合う狂気の連載企画『饅頭インダハウス』、今回で第4回目の更新となります。

前回はせせさんが難題、安野モヨコ『シュガシュガルーン』に対して、長崎 和泉屋の綺麗菓というバッチバチの返しをくれた類稀なる神回であった。そして僕に課されたお題はどら焼き・初宿。こりゃあ僕もバッチバチの回答をキメなければ。

バックナンバー:第3回 饅頭インダハウス








どら焼き・喜田家『初宿』

今回は近場にこのどら焼きを買えるお店があるとのことで、実際に行ってみた。

和菓子を買うために遠出をするというのはこれまでの僕には無かった体験。少しワクワクしながら外苑前のお店までくると、店内にはどら焼き以外にもお団子やらカステラやら、とにかく和菓子だらけのこのお店。和菓子屋なので当たり前っちゃ当たり前なのだが、和菓子って基本デパ地下とかコンビニでしか買わない僕からすればそのことだけでもかなり新鮮。この連載をしていなかったらきっとこの出会いも無かったのだろうなぁ。

リンク:六人衆 店舗情報

そうして手に入れた喜田家のどら焼き『初宿』。これも当たり前だけれども和菓子にも一つ一つ名前が付いていて、どら焼きを「どら焼き」としか捉えて来なかったのは勿体無かったなと少し後悔。

そしてこのどら焼き、流石はせせさんの一押しとあって抜群に美味しい。皮はモッチモチだし、ほんのりと甘さがあってなんとも優しい味わい。そしてつぶあんの上品な甘さは、飽きやしつこさとは程遠い場所にあって、それでいてしっとりとした口当たりが存在感たっぷり。優しい皮の中に主役の餡子がどっしりと構えている。200円以下で手に入る幸せの中でもトップレベルのハピネス値だ。

さて、このどら焼きにどんなカルチャーを返そうかと考えたものの、カルチャー大好き少年としては、やはり藤子・F・不二雄『ドラえもん』を外すことはできなかろう。

きっとこの国でドラえもんを知らない人はいないだろうし、SFを「少し不思議」と定義づけた藤子・F・不二雄の作品は、半世紀近い時を経た今でなお、様々なカルチャーに影響を与え続けている。辻村深月『凍りのくじら』、大童澄瞳『映像研には手を出すな!』、果てはスティーブン・スピルバーグ『E.T.』『BACK TO THE FUTURE』まで。その影響範囲は計り知れず、『ドラえもん』は今もなお色褪せぬ日本を代表するカルチャーだ。

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そして大人になってからというもの、僕が生まれるより前のドラえもんの映画を観るようになった。とりわけ僕が好きなのは『ドラえもん のび太の魔界大冒険』。子供向け映画と侮る事なかれ。これがまた数あるドラえもん映画の中でも伏線とムードが凄まじい大名作なのだ。

「もしもボックス」を使って「もしも魔法の世界になったら」という世界を作り上げてしまったのび太が、魔界接近に伴う世界の終わりを防ぐために魔界の魔王を倒すという話なのだが、作中の雰囲気はかつてないほどの閉塞感に満ち、大人の僕が薄気味悪さを感じるほど。

さらに舌を巻くのは作中いくつも張り巡らされる伏線の数々。特に前半の石像の伏線を見事に回収し、物語が収束して行く様子は痛快ですらある。一見無価値なものがその実、物語を切り拓く鍵ともなる。「少し不思議」なだけのこの世界では、実は単純な当たり前が何よりも大切で素晴らしい。そんな事を教えてくれる大傑作だ。エンディング曲がやたら良いと思ったら小泉今日子だった事も評価が高い。(Amazon Primeで視聴可能なので是非に。一見の価値は大いにあります。)

あまりストーリーに触れるとネタバレになってしまうので控えるが、「もしもボックス」というひみつ道具は「もしもこんな世界があったら」というパラレルワールドを実現する道具である。つまり、のび太が作った魔法の世界は彼が住む世界とは何の関係もなく、元の世界に帰れるのであればその世界の事など捨て置けば良い。ところがのび太という男は優しく、そして芯の強い男である。

ちぇ、いつもこうなんだ。

ドラえもんと変わった世界へ行くと、帰れなくなって、変な事件に巻き込まれて。

もう沢山だよ。

と物語の序盤、魔法の世界から戻る術を失ったのび太はぼやきながらも、パラレルワールドから戻れる事がわかったその瞬間に、魔界に残した仲間たちの身を案じ、

えー!それじゃダメだよ!ちっとも解決にならないじゃないか!

と、再び魔法の世界に舞い戻って行く。こののび太の心根の優しさと芯の強さって、まるで『初宿』のようではないか。なるほど、どら焼きといえばドラえもんだ。だがしかし、どら焼きが持つ人をほっこりとさせる優しさと、人々が愛してやまないあの強かな美味しさはのび太のキャラクターそのものだったのだ。

最後に、魔法の世界にやってきたドラえもんが早速唱えた魔法を引用しておこう。

どら焼き降ってこい!

 

2つ目のカルチャー

さて、次にせせさんに出すお題は、空気公団『なんとなく今日の為に』にしようじゃあないか。

美しい日本語のメロディとシンプルでクールな演奏が持ち味の空気公団。その中からこの曲を選んだのはひとえに、この歌詞が理由だ。

薄色に誰が映る

綺麗なお茶が入りました

このフレーズを聴く度に、この言葉の美しさを理解する事ができる国に生まれて良かったと思える、そんな大好きなフレーズをせせさんに託そうじゃないか。この曲の持つ切なくも美しく、そして強かな雰囲気を和菓子にしちゃって欲しい。

 

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