泥臭い、野暮ったい、でも響く。とぐろを巻いて鳴らされる3人のグルーヴ、台風クラブ『初期の台風クラブ』

いい音楽

何も台風21号が東京に近付いているタイミングでこの記事を書くこともないのだが、今年出たアルバムの中で、一番泥臭くて野暮ったくてかっこいいと思うのだ。しかも聞けば聞くほどその思いは募るばかり・・・!

いてもたってもいられない!京都の3ピースバンド・台風クラブの1stアルバム、その名も『初期の台風クラブ』のレビュー、いかせてくれ。

台風クラブとの出会い

そもそも僕と台風クラブの邂逅は以下のポップス界隈インフルエンサー達の言及によって成された。

彼らをもってしてここまで言わしめる台風クラブとは何者なのか。

うたとギター、ベースにドラム 見ての通りの3人組 日本語ロックの西日、台風クラブです。

公式HPのメタ・ディスクリプションにこんな文言が載っているがなるほど、日本語ロックの西日の様なバンドか。(意味が全然分からない)

「初期の台風クラブが良い」と言うくらいなのだからキャリアは長いのだろうとか思っていたらなんてことはない、1stのタイトルが『初期の台風クラブ』なだけ。「なんと紛らわしい事よ」と思いながらも彼らへの期待は日に日に募るばかり。拠点が京都なので東京でのライブも少なく、音源を聞こうとしてもApple Musicに登録がない。中々聞けないことに焦らされながらもやっとの思いでアルバムを買い、下北の自宅のコンポで満を辞して聞いた『初期の台風クラブ』はというと、僕の期待を優に超え、端的に言って最高だった。30分と短いアルバムではあるが、台風クラブを聞いていると時間はあっという間に過ぎていく。良い。良すぎる。油断していたら泣いてしまいそうなくらい良い。

アルバムのオープナー『台風銀座』のイントロ一発目からして良い。そして全曲聞けば聞くほど良い。

彼らの音楽に新しさや珍しさはない。60〜70年代の音楽をルーツとして、ロックとしか言いようのないシンプルな音楽性。今のシーンにおいては特異なサウンドではあるが、温故知新的なそのスタイルに音楽的な新しさはない。彼らの武器は3ピースという最小限の編成から生まれるグルーヴと、グッドメロディ・グッドリリック。たったそれだけで僕らの琴線をこれでもかというほど震わせるのだ。

あてずっぽに路地を手繰って 知らないままおれをさらって

帰れない 長い午後 うろついてたいのさ

-『ずる休み』

夜を巡り 上り下り

ひとり遊び 町はひかり

あと10分で何度目のセプテンバーさ

-『飛・び・た・い』

前に倣って 足絡まって

くそったれパーティーさこの感じ

別のやり方 違うステップ でたらめな俺を

知らん顔すんなよミューズ

-『ダンスフロア』

なんと野暮ったい歌詞だろうか。街を歩けばそこら中に転がっている様な日常が、台風クラブの音楽の中には見え隠れしていて、くすぐったいくらいリアルだ。圧倒的に等身大。カッコつけたり背伸びしたりしない。だから妙な温度感でもってして僕らに響くのである。「まち」という単語を「街」ではなく「町」って表記するバンドは大好きだ。

もちろん歌詞だけではない。サウンドからは懐かしさが漂い、ギターソロからは音楽への愛が薫る。不器用に、無骨に、ルーツとなるバンドや自分の中の音楽と真っ正面から対峙してたどり着いた骨太ロック。たった10曲の中に、狂おしいくらいの情熱と愛と生活が詰まった至高の名盤、それが『初期の台風クラブ』だ。

 

『台風クラブ』に一言

東京にもよく来ているみたいだし、是非ともライブが観たいバンドだ。

*2018/3/8加筆

『初期の台風クラブ』が2018年CDショップ大賞の準大賞に選ばれたと聞き、慌てての加筆である。

ちゃっかり2回ほどライブにも行ったし、その時のエピソードが最高で台風クラブへの愛が止まらない。

これ僕もやってたんですよ。バイト先のオフィスでラジオがずっと流れていたんですが、作業に集中しなきゃいけないから「いいなこの曲」って思ったらその時間だけメモっておく。後で番組のHPとかでその時間に流れてたのがなんだったのか確認するんです。それを石塚さんもやってるんだと思うとただただエモい。

仕事しながらバンドを続ける苦労とか、石塚さんの音楽に対する愛情が一発で伝わる最高のエピソードだと思います。

台風クラブおめでとうございます!!!


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